組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

理想の組織のゴールイメージと契約形態・発達段階の話

前回は個人の働き方のゴールイメージについてまとめましたが、拡張して組織のゴールイメージを描いてみました。
結論から言うと、正社員だけの組織は成立しなくなると考えています。これは派遣社員を雇用することで人件費を変動費化するというようなレベルのことを言っているのではありません。社会システムの変化を前提とすると、正社員だけの能力で事業継続するのは難しいという話です。以下にざっと書きます。

組織のゴールイメージ

  • 前提1: 既存事業と新規事業が併存する組織
  • 前提2: 戦略パレットの4象限のうち、不確実性の高い2象限に該当する

一般的に既存事業は市場成長率が逓減し、キャッシュフローを安定的に稼ぐことが求められます。その場合、採るべき戦略はクラシカル戦略です。クラシカル戦略に求められる戦い方は「持続可能な競争優位」です。組織において大切なことは理念や自己実現できる環境になります。戦略の意思決定はトップダウンで資源をフォーカスします。

新規事業はすばやく適応し続けるアダプティブ戦略です。試行錯誤を繰り返し、フラット&アクティブなリーダーシップスタイルが適しています。継続的な実験を繰り返し、早く失敗する能力が大切です。

このような2つの戦略を両利きで遂行する組織ってどうなるのだろうかを考えました。結果、組織で働く人の役割は「経営係」「試行錯誤型イノベーション係」「累積的イノベーション係」の3つに分類されました。「係」としたのは、なんとなくその方がマイルド感が出るためです。経営は偉いわけでもないので得意分野の違いだけだよということをアピールするためにそれぞれに「係」をつけましたた。

経営係

経営係は文字通り経営する人です。中長期の全社方針や事業ドメインの選択、全社戦略や組織戦略など、数年単位に影響を及ぼす意思決定を行います。

試行錯誤型イノベーション

新規事業を担当する人を想定しています。日々の業務で継続的に実験が求められ、自律した人材によるセルフマネジメントが必要です。正解が何かわからない中で仮説検証をぐるぐる繰り返し、3歩進んで2歩下がるような仕事の進め方です。

累積的イノベーション

既存事業を担当する人を想定しています。オペレーション業務*1を最適化するため、常に改善・改良を行い続けます。業務は専門化し、細分化されます。任された範囲は権限委譲を進めることでモチベーションUPにつながります。

役割ごとの雇用形態と発達段階

ここからが本題ですが、係ごとの雇用形態と発達段階*2を定義するとしっくりと整理できました。

経営係

経営係の雇用形態は、取締役(雇用契約ではありませんが…) or 業務委託が良いと思います。発達段階はティール以上の方がフィットする役割です。そもそもティールの発達段階にある人は会社組織で働くことが適しておらず、制約が苦手です。したがってすでに正社員で働いていない可能性が高くなります。そして、かなりの権限と裁量が委譲された状態ではないと力が発揮できません。
会社の視点では、権限委譲を進めすぎると好き勝手にされるリスクがあります。実力が伴わない場合は組織に壊滅的なダメージを与える可能性もあります。両者のニーズを考えると、いつでも双方から解約を申し入れることができる雇用形態が適していると考えます。

試行錯誤型イノベーション

試行錯誤型イノベーション係の雇用形態は、業務委託契約 or 期間の定めのある雇用契約です。発達段階はグリーン〜ティールの方がフィットします。自律が求められる働き方のため、発達段階が低い人には適していません。また、新規事業で何が起きるかわからないので自らの人生に自ら責任を負えるだけのマインド・スキルが必要です。
会社の視点では、新規事業は不確実性が高く、人件費を固定化したくありません。そうなると、変動費化できる契約形態のほうがリスクヘッジできます。

累積的イノベーション

累積的イノベーション係の雇用形態は、正社員です。発達段階は〜グリーンがフィットします。オペレーションの洗練が求められつつ、権限委譲を通じて自己実現を追求します。自分の人生ビジョンと、事業・組織のビジョンとのフィット感が大切です。
会社の視点では長期的にコミットし続けてもらうことで、組織能力が高まります。今の日本では雇用を安定化する正社員がフィットします。

まとめ

これまでの話をまとめると、以下のとおりです。

役割  対象領域 雇用形態 発達段階
経営 全社 取締役 or 業務委託 ティール以上
試行錯誤型イノベーション 新規事業 業務委託 or 期間の定めのある雇用契約 グリーン〜ティー
累積的イノベーション 既存事業 正社員 〜グリーン

正社員からフリーランスの流れが進むのは社会システムの変化の影響が大きいと考えていますが、試行錯誤型のイノベーションは正社員のみでは難しいと思います。ここまでの話は戦略で言うポジショニングの話でしたが、どう実現するか(ケイパビリティ)のほうが大切だと捉えています。多様な雇用形態の方が入り混じっても組織としての軸をぶらさないだけの組織開発力が超重要ということです。

もう少し練り上げてから続きを書きたいと思います。

*1:オペレーション業務はイノベーションと比べて軽視されがちですが、決してそんなことはありません!

*2:発達段階は高ければ良いと捉えられがちですが、単純に違うだけです。高ければ良いものではありません!