組織を極める

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読者モニターに当選して『フリーダム・インク』を読んだ話

久しぶりにブログを書きます。前回書いたブログも英治出版さんの読者モニターに当選した記事でした。本当はもっとアウトプットしたいのですが、筆不精ですみません…

今回は約1年ぶり2回目の当選です。英治出版さん、今回もありがとうございます!僕がどれだけ英治出版好きかは読者モニターに当選して『解像度を上げる』を読んだ話 - 組織を極めるをご覧ください(笑)

今回のフリーダム・インクは、一言で言えば『ティール組織』の実践書です。原書の『Freedom, Inc』は、2016/2/23 に発売されました(Amazon調べ)2008年に発売されました。ティール組織の原書の『Reinventing Organizations』が2014/2/20発売ですので、Reinventing Organizationsを参照しているかもしれません(そこまで調べていません)

※ 書籍の出版年が誤っているとのコメントを頂きました。ありがとうございます。フリーダム・インクに登場する事例が古かったので、Reinventing Organizationsよりも先に出版されたのではないかと思っていたのですが、腑に落ちました。

なぜそう感じたかというと、ティール組織に登場するFAVIの事例があったからです。その他にはハーレーダビッドソンゴアテックスのW・L・ゴア&アソシエーツなど、日常生活に馴染みのある企業も登場しますので読みやすいです。肝心の内容ですが、僕がこの本を読んで良かった点を2つ上げます。

  1. WHY企業とHOW企業という表現で、従来型と進化型組織の違いをシンプルに説明している
    • 小難しい理論ではなく実践的でわかりやすい
  2. 企業変革をどのように行ったかの成功例だけではなく、失敗例も紹介されている
    • ハマりそうなポイントあるいはかつて自分がハマったポイントが理解できる

以下、簡単にまとめます。

フリーダム・インク書影

1. WHY企業とHOW企業

WHY企業とは、社員人一人がビジョンを心から受け入れて、主体的に行動する企業と解釈しました。一方でHOW企業とは、上司が部下をコントロールし、顧客価値に役立たないルールの遵守に固執する企業と捉えました。WHY企業は解放型のリーダーシップに基づきます。リーダーは現場こそがもっとも顧客のことを理解しているという信念を持ち、いかに働きやすい環境を整えるか、に力を入れます。解放型リーダーシップの大事なポイントは3つ「関係性」「能力の発揮」「自律性」であり、人はこの3つを大切にすると本領発揮するとのことです。

この「関係性」と「能力の発揮」と「自律性」は、成人発達理論でいう、人がパフォーマンスを発揮する条件(環境と能力と課題がフィットするときに能力を発揮する)とも合致します。当たり前のことなのですが、関係性の良い環境で、自分の強みを活かすことができ、主体的に課題に取り組むことができれば、社員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮します。問題はこのような組織をどう作るかなのですが、それが次に書かれています。

2. 企業変革の成功例と失敗例

では、どうしたらHOW企業からWHY企業へと転換できるのか。以下の3つが大切と読みました。 - まず経営陣が変わる - ミッション、ビジョン、価値観、戦略を丁寧に腹落ちするまで伝える - 最後に責任と権限を移譲し、解放型のリーダーシップを発揮する この順番がポイントです。

はじめに、経営層が変わらないことにはWHY企業への変革はありえません。これは『ティール組織』にも書かれていましたが、経営層のあり方が全社に影響を与えるからです。わかりやすかったのが、レンタカー会社の例で、社長自らが営業所のフロントに立ち、顧客対応を行った事例です。社長自らが現場で何が起きているかを身をもって体験することが無駄なルールを排除する一歩目になると理解しました。トップのこのような姿勢は、現場で働く社員からの信頼も増すと思います。

続いて、「ミッション、ビジョン、価値観、戦略」の腹落ちなくして、進んでは行けないと学びました。とある事例では、ミッション・ビジョンの腹落ち前に解放型のリーダーシップを取った結果、むしろ組織崩壊したとありました。これは僕自身も経験があります。かつて、とある部門を任せていただいた際、十分な共通ビジョンを持てないまま自律分散型の組織スタイルを取った結果、ミドル層から支持されず組織がうまく回らないことがありました。他社事例もそうですが、自分の経験とも重なる失敗例で、納得感がありました。なんでも解放すれば良いというわけではないということですね。

最後に、解放型リーダーシップの発揮方法も具体的に書かれています。特に刺さったのはSOLという清掃サービスを行う会社のCEOヨロネンさんの一言。「私たち経営者が飛行機や一流ホテル、自動車にお金をかけたら、社員たちも真似をするでしょう」同族会社だからこそ、経営者自身が質素倹約に努めることで全社へのメッセージになります。結果、費用の90%が人件費というコスト構造ながらも、(営業)利益率7〜8%を維持できるだけの低い販管費率に抑えることができるとのことでした。決してコスト削減を強要するわけではないのですが、リーダーシップのあり方が社員一人ひとりのHOWへと伝播していくということですね。

さいごに

以上、フリーダムインクの雑感でした。400ページを超える読み応えのある一冊ですので、読み切るには覚悟が必要です!実践的な良書ですので、組織好きの方はぜひご一読ください。ちなみに翻訳者と編集者は『ティール組織』を手掛けられた鈴木達哉さんと下田理さんコンビですので、その点でもおすすめです!

英治出版の読者モニタープログラムにより無料で書籍を受け取りました。このサイトにレビューを書くよう求められてはおらず、上記はあくまでも個人としての見解です。