組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

経営戦略と人事戦略のつながり 試行錯誤型組織開発について

今日のゼミで、なんとなく光明が見えそうになったので、忘れないうちにブログに残します。

先行研究をもとに組織開発の歴史をまとめたのが以下の図*1です。
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マネジメントの7要因をまとめた図ですが、かつては、「組織開発」(ソフト)と「組織変革」(ハード)は相互に作用するものの、別の概念で捉えられていました。ちなみに現在では、ソフトに加えてハードも組織開発の領域と広義に捉えることが一般的です。そして、ソフトの4つとハードの3つを足した7つがマッキンゼーが提唱した7Sなのですね。今日までそこにつながらなかった自分に反省です…

さて、ゼミの中で、ソフトの4Sは短期的に変えることが難しいため長期の視点が大事であり、ハードの3Sは意思決定により短期に変えることもできる。ただし、ハードを急激に変えたとしてもソフトがついてこないと撃沈するよね、という話になりました。これは「組織は戦略に従う」でチャンドラーが言っていると同じく、組織は戦略に従うのではなく戦略はすぐに変えられるが、組織はすぐに変えられないので、変化をするための準備が常に必要であるということと一緒です。


前置きが長くなりましたが、今日の議論の発端は、事業単位における組織開発手法が見当たらないのはなぜか、という切り口でした。詳細は前回のブログをご確認ください。
tapir320.hatenablog.jp


経営戦略のアウトプットとも言える経営計画は、環境変化が速い中で中長期な計画が立てづらくなり、3か年の中期経営計画が主流となっています。一方で、人事戦略における組織開発は長期的に取り組む課題であり、5年、10年といったロードマップが必要になります。経営は5年後なんてわからないという一方で、人事は10年後の人員構成や組織構造を考えることを求められるので、そこに矛盾が生じます。結果的に、経営戦略と人事戦略の時間軸の矛盾から、人事は独立して人事戦略を立てざるを得なくなったのではないか、というアドバイスを頂きました。

そこで待てよと思いました。どこかで見たことがあるぞ…

BCGが出しているなぜ戦略に戦略が必要なのかだ!と。


環境の予測可能性が低く、かつ、企業行動の環境への影響力が低い場合は、アダプティブ戦略が必要になります。また、アダプティブ戦略とは4つのステップ(変異→選定→展開→調整)からなる反復的な学習プロセスが特徴である、とのことです。

ピンときたのは、組織開発のソフト面(の一部)は長期的に醸成する必要がある一方で、その打ち手は試行錯誤型に実行するのが正しいのではないかということです。


人事の仕事をしながら自己矛盾を感じていることは、「人事は人事を中心に考えすぎる」ということです。自分の仕事を中心に考えるのはもちろん当たり前ですが、その前に経営戦略やもっと上位概念の市場環境を考えるべきであるというのが私の考えです。経営戦略としてアダプティブな戦略が求められる以上は、人事もそれに準じるべきではないかと思います。

そして、ソフトの4Sを更に分解すると、変えてはいけない3S*2(管理スタイル・人材・共通の価値観)と、常に変化の準備が必要な1S(技能)に分けることができます。この技能をいかに素早く変化し続けることができるかが、アダプティブ戦略が求められる環境では大事と考えました。それを実現するのが組織開発なのかなと。


人事は上段から構えるのではなく、現場に切り込んでいく必要があります。変えるべきSである技能の変化のきざしをいち早く察知するためにも、人事が主体的に行動を起こすべきです。ひょっとして、組織開発で一番大事なテーマは、メンバーと人事の関係ではないか、とも考えました。このテーマは別途調べたいと思います。


さてさて、探求が尽きることは無いです。これからは「試行錯誤型組織開発」というテーマでもう少し考えてみたいと思います。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/NINKAN/kanko/pdf/bulletin06/02_01R.pdf 「組織開発(OD)とは何か? 南山大学 中村和彦先生 より作成

*2:この点は、組織によって考え方が違う可能性があります。

対話型組織開発の効果測定について

またまたブログの更新が滞っておりましたが、久しぶりに組織開発のお話です。本日は、自分自身の疑問をブログに綴りたいと思います。

組織開発の手法として、対話型組織開発がブームとなっています。AI(アプリシアティブ・インクワイアリー)やフューチャーセッションなどが代表的な手法です。対話型組織開発は、診断型組織開発と対比して語られることが多いですが、特徴は、組織開発の担当者自身が組織の診断をすることなく、実践者との対話を通じて組織開発を行うということです。
南山大学 中村和彦教授の「入門 組織開発」を拝読させて頂き、P180にまとめられていた体系図が大変参考になりました。そこで一つの疑問が生まれました。

組織(グループ)と戦略が交差する部分の組織開発の手法が空欄となっています。これは何故なのか…


そこで、私なりに回答を考えてみました。

まず、組織は戦略に従う(チャンドラー)が言っているとおり、組織は戦略に従うのではなく、戦略よりも組織は変化に時間がかかるので、外部環境を注視した変化の準備が必要である、ということが前提にあります。
事業戦略は、事業特性や組織の強み(ケイパビリティ)に応じて考えられるものではありますが、事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が編み出されていないことが空欄の理由と考えました。


事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が考えられれば面白いですよね。個人的には、B3Cフレームワークを活用した組織開発をイメージしています。そして、さらに効果測定が可能な対話型組織開発手法があれば理想です。投資対効果を測ることができれば、実務的な広がりがあると思います。

組織開発は深い分野ですので、探求が尽きることはありません。引き続き挑戦していきたいと思います。今回勉強をさせて頂いた書籍はこちらです。
入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)

中小企業診断士 第2次試験に合格しました

2回目の2次試験で、中小企業診断士試験に合格することができました。今後、中小企業診断士を目指す方のために私がどのような勉強法で合格をしたのかをまとめたいと思います。特に2次試験は、勉強すればするほど深みにハマると聞きますので、少しでも診断士を志す人の助けになれば幸いです。

はじめに

今年は2次試験のための勉強をほとんどしませんでしたが、無事合格することができました。ただし勉強をせずに合格したのではなく、社会人大学院での学びを活かしたところ結果につながりました。2014年の12月、不合格の結果に少なからずショックを受けていましたが、試験勉強だけでは実務の力が全くついていないことも感じていました。そのような中、当時の日経新聞の書評で取り上げられていた経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)がきっかけになり、金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)へ入学を決意しました。そして、K.I.T.での学びのおかげで試験に合格することができたと考えています。

金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)について

私の通うK.I.T.は、超少人数制(1つの授業に多くても20人程度)というところが特徴です。先生との距離も近く、一人ひとりに濃い教育を与えて頂けます。そして、先生はみなさん超一流です。私の中では、日本で一番の先生に教えて頂いていると思っています。
授業も講義形式の授業はほとんどありません。ディスカッションを中心とした自ら学びを作り上げていくスタイルです。よって、やるもやらないも本人次第。真剣に取り組めば取り組むほど、得られる結果も大きいと感じています。
K.I.T.のさらに特徴的なことは、ビジネススクールにも関わらずゼミがあることです。ゼミはさらに少人数制で、私の所属する三谷ゼミには5名の学生がいます。毎週土曜日のゼミは本当に贅沢な時間で、各自が進める研究テーマに沿って三谷さんとゼミ生でディスカッションを行います。

重要思考とB3Cフレームワーク

K.I.T.の主任教授も務める三谷さんから入学後の最初の科目である「戦略思考要論」の集中講義で叩き込まれるのが重要思考とB3Cです。
重要思考は「重み」と「差」で考える論理思考です。問題を考えるとき、その「差」に注目しがちですが、それだけではなくそもそもの「重み」から考える思考法です。
B3Cは、三谷さんが生み出した独自のフレームワークです。3Cに足りない考えを追加し、土俵(Battle Circle)、競合(Competitor)、自社(Company)に対して、「事業そのものの魅力」と「事業特性」を組みあせて6つのボックスから考えるフレームワークです。詳細は戦略思考要論」のページをご参照ください。

前置きが長くなりましたが、大学院での学びの基本である重要思考とB3Cフレームワークを使ってどのように2次試験に取り組んだのかを事例1の第1問を使って振り返ります。

事例1の第1問での振り返り

第1問
ゲートボールやグラウンドゴルフなど、A社を支えてきたスポーツ用品事業の市場には、どのような特性があると考えられるか。100字以内で述べよ。

問題全文は中小企業診断士試験問題よりご確認ください。

考え方

この問題は「市場の特性」を問われていますので、B3Cで言えば左の枠を答えることになります。また、与件文を読むと以下の様な特徴があります。

  • バトミントン
    • 「いち早く流行の兆しをとらえた創業者が…」
    • 「創業者のもくろみどおりその市場は広がった。」
    • 台湾製や中国製の廉価なシャトルコックを輸入されることになると、A社の売上は激減した。」
    • 「木製ラケットが金属フレームに代替されたこともあって、A社の売上は最盛期の70%減となり…」
  • ゲートボール
    • 「市場は徐々に伸長し、A社の製品が市場に出回るようになった」
    • 「しかし、その後、ゲートボールの人気に陰りがみられるようになったために、…」

上記の抜粋のうち、問われているのは「市場の特性」ですので、A社固有の事象は関係ありません。従って、与件文から「スポーツ用品事業の市場特性」についてのみ考えます。

解答の導き方

DMU*1にとって大事な事*2は、「みんながそのスポーツをやること」と捉えました。従って、みんながやらなくなると一気に誰もやらなくなるので、市場規模の拡大・縮小が激しいという特徴があります。製品ライフサイクルの変化のスピードが速いということです。
また、ファイブフォースで考えると海外からの廉価版による売上激減や木製から金属に移り変わったことによる代替品の脅威もありますので、さほど高い技術は必要とせず、参入障壁は低いことがわかります。これらの特徴をまとめて解答を導き出しました。

B3Cの補足説明

B3Cのフレームワークと言っておきながら、ファイブフォースが出てきているではないか、というツッコミもあるかと思います。なぜかと言いますと、B3Cの中の一つの要素をファイブフォースを使って考えるからです。
フレームワークって沢山(SWOT、ファイブフォース、アドバンテージリスクマトリックス、VRIO、PEST…)ありますが、そのつながりや粒度を理解していますでしょうか。少なくとも1年前の私は全く理解していませんでした。

フレームワークの概要を理解していても、何を対象に使うか(企業戦略、事業戦略、オペレーション戦略)やそのつながり(B3Cとプロダクトライフサイクル・ファイブフォースの関連)を理解することが大事です。1年前の私も、フレームワークの存在は知っていましたが、何をどう使って、どのようなつながりがあるかは全く理解していませんでした。*3従って、不合格になって当然だったと思います。

まとめ

2次試験の合格のポイントは、本質を学ぶことだと思います。全問記述式の解答ですので、与件文を正確に捉え、事実(定量・定性情報)をもとに論理的に考え、正解を導く必要があります。そのためには、正しく考える力を身につける必要があります。

最近感じていることは、物ごとを捉えるときに大事な事は、どれだけ正しく見ることができるかということです。判断をする前に、まずはそもそも正しく見ることができているかを疑うことから考えるようにしています。どうしても自分が正しいと思いがちですが、それは自分の価値観・判断基準だけで結論を出しています。

まずは現状を正しく捉える、そのためには、フレームワークを使って論理的に分析することも必要になります。また、公平な目で見る前提として自分自身が沢山のことを知っておく必要もあります。

K.I.T.で本質的な考え方を学びたいと思われた方は無料の公開講座もあります。是非一度体験してみてください。
www.kanazawa-it.ac.jp

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!
hatenacorp.jp
hatenacorp.jp

診断士試験の合格で、基礎知識の確認ができたと思っていますので、これからも日々研鑽に努めます!

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見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:「Decision Making Unit」(意思決定単位)の略

*2:重要思考

*3:今でもまだまだB3Cを理解したとは言えませんので、引き続きK.I.T.で学びたいと思います。

はてなの組織開発について

こんにちは、人事・総務部id:tapir320です。
この記事ははてなデベロッパーアドベントカレンダー2015の9日目です。昨日は id:cockscomb による Swiftオープンソース化の衝撃 でした。
今回、開発者ではない私が、なぜデベロッパアドベントカレンダーに登場する機会を頂いたかと言いますとid:Songmu

「俺は会社をデベロップしているんだ!」というコーポレートの方も大歓迎です。

という一言のお陰です。

せっかくの機会ですので、会社のデベロップという観点から、はてなの組織開発についてお話をさせて頂きます。

組織開発とは

組織開発という言葉は、人事に携わっていない方にとっては馴染みがないと思います。様々な定義がありますが、私は組織を活性化するためのあらゆる打ち手とみなしています。

人事・総務の業務領域のうち組織開発に関連するものは、「採用」、「教育・研修」、「人事制度」、「社内行事」、「福利厚生」等があります。これらは一体となり、つながりを持つことが大事だと考えています。一つの領域だけに注力するのではなく、有機的につながることで組織の力を2倍・3倍に高めることができると信じています。

はてなの組織開発

「採用」、「教育・研修」、「人事制度」、「社内行事」、「福利厚生」の5項目において、はてなの特徴的な取り組みをご紹介します。

「採用」 〜社員紹介採用の強化〜

最近は既存社員の紹介によりご入社頂くケースが増えていますが、組織開発の視点でも大事なことだと考えています。自分自身に置き換えるとわかりやすいのですが、自分が満足していない会社に知人を紹介したいとは思わないはずです。従って、紹介による採用が多いということは、既存社員が会社に満足している証と言えます。

一方で、紹介経由で入社した方も安心感があります。気の置けない人が勧める環境であれば、転職という人生の大切な節目において、リスクが小さい保証になるからです。紹介経由の採用が好循環で回り始めると組織力の強化につながることがわかると思います。

もちろん、紹介であればどなたでもご入社頂けるということではなく、残念ながらお断りするケースもあります。ご紹介を頂いた方、また、エントリーを頂いた方には申し訳ないのですが、選考は厳正に進めている旨を補足させて頂きます。

「教育・研修」 〜社内勉強会の開催〜

はてなでは様々な社内勉強会が開催されています。技術やデザインの勉強会は毎週開催されていますし、人事・総務部でも月に1回テーマを設定して勉強会を開催しています。最近は毎週月曜日の定時後に好きな本を読む「モクモク会」という取り組みも生まれました。そして何よりも素晴らしいのは、これらの勉強会が自発的に開催されているということです。(人事・総務部の勉強会は僕がやろうと言い出したのですが…)

他人に強要されて学ぶのではなく、自ら主体的に行動することが真の学習に繋がると思います。フォーマルな組織上の取り組みではなく、インフォーマルなコミュニティによる学びの場が組織力を高めるのです。実践的なコミュニティを生み出す土壌があることがはてなの価値であり、勉強後には寿司を食べる文化も良いと思っています。

「人事制度」 〜評価ではフィードバックを大切に〜

はてなの人事制度はきっちりと設計されています。「成果」「行動」「専門」という3つの視点で定量的・定性的に評価制度を運用します。ただ、忘れてはいけないのは、評価制度は査定のためだけにあるのではなく、個人や組織の成長のためのツールであるということです。現状と目指すべき理想のギャップを埋めるツールが評価制度ですので、目標設定とフィードバックが大事なのです。

はてなの組織体系は、サービスごとのラインと職種ごとのラインがマトリックス型のように構成されています。そのため、サービスの上長と職種の上長の2系統からフィードバックを得ることができます。このような仕組みは手厚さという面では素晴らしいのですが、一方で時間がかかるというデメリットもあります。効果と労力はトレードオフとも言えますが、さらによい制度にするためには見直しが必要かもしれません。

「社内行事」 〜半期に一度の全社納会〜

普段は京都・東京(愛知・宮城のリモート勤務の方もいます)に分かれて働いていますが、半年に一度は全社員が京都に集合し、納会を開催します。納会では半期の業績の振り返りや新しい期に向けた方針発表がなされます。また、懇親会では全社員の前で「新人賞」「敢闘賞」「社長賞」という3賞の表彰もあります。

テレビ会議、Slack、はてなグループというツールを駆使して業務効率化に取り組んでいますが、リアルに顔を合わせるコミュニケーションも大事です。全社員が一堂に会し、同じ空間で空気を共有することに価値があると思います。半年の頑張りを讃え、また半年頑張ろう!という組織のスイッチを入れるのが納会の役割です。

「福利厚生」 〜まかないランチ

最後はキングオブランチとも言われるまかないランチです。ご存じの方も多いとは思いますが、はてなではお昼になるとまかないが振る舞われ、社員が同じ釜の飯を頂きます。まかないランチの効果は今回のエントリーでは書ききれないほどありますが、一番はコミュニケーションの円滑化につながっていることです。

まかないランチはリフレッシュスペースのランダムな席に座って食べます。職種もバラバラに混ざって食べるため、自然といろいろな人と会話をすることになります。そして、コミュニケーションが円滑になることで社員の関係の質も良くなります。関係の質が良くなれば思考の質が良くなり、思考の質が良くなると行動の質が良くなります。行動の質が良くなると結果の質が良くなるのです。これはダニエル・キム教授がいう組織の好循環モデルを実現している好例です。

まとめとこれからの思い

今回ご紹介した制度から生まれるはてならしさは、はてながコツコツと築き上げてきた文化の賜物です。仮に他社が同じような制度をハードとして仕組み化することはできても、ソフトである組織文化を模倣することは一朝一夕ではできません。

これはサービス開発と一緒だと捉えています。へんな会社だけど真面目な会社でもあるはてなが作ったサービスを、個性豊かなユーザー様に利用し続けて頂くことで成立しているはてなコミュニティと同じなのです。組織もサービスも、仕組みと文化が融合して初めて価値があるのです。

私が入社して3年が経過しましたが、これまでは主に仕組みを整備することを行ってきました。その過程で気をつけていたことは、いかにしてはてなの文化を活かしながら整えていくかということです。

しかし、これからは挑戦をしなければいけません。はてなが日本一、世界一のサービスを生み出し続ける会社になるためには、仕組みも文化も変わらなければいけないこともあると考えています。

具体的には意思決定のスピードを速めることです。以下のエントリーでも書いたとおり、変化の速い環境においては、Do→Learn→Prototypeのプロセスをぐるぐると高速に回すことが求められています。
tapir320.hatenablog.jp
試行錯誤型のプロセスを実践し、実験する能力を高め、失敗への対応力をつけていく必要があります。

そして、組織全体のスピードを上げるためには、人事・総務も変わらなければいけないとも考えています。人事・総務もエンジニアやデザイナーに負けないぐらいの実力をつけなければいけません。自分の専門領域を追求し、世の中に変化を起こし、はてなに関わる全ての人が笑顔であり続けるために、はてなのサービスやカルチャーを愛し、インターネットを良くすることに貢献する、そんな人事・総務が理想の姿です。

外部環境が大きく変化をする中、「変わらなければならないこと」と「変わってはいけないこと」をしっかりと見極め、へんな会社であり続けたいと思います。

はてなでは文化に共感して頂ける仲間を絶賛募集中です!

hatenacorp.jp
hatenacorp.jp

明日は、id:taraoです。お楽しみに!

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組織がイノベーションを起こすために人事は何ができるのか

早いもので後期の授業がスタートしました。前期はなんとか単位を落とすこと無く終了しましたが、早くも授業の予習復習に追われています。ブログを書いている暇があったら授業の準備をしろという声が聞こえてきそうではありますが、半期の振り返りの意味も込めてこれまでに学んできたことをまとめたいと思います。

ゼミでの研究テーマは今回のエントリーのタイトル通り「組織がイノベーションを起こすために人事は何ができるのか」を中心に進めています。まだまだインプットの段階ではありますが、これまでに調べ、考えたこととして以下の2点があります。

  • イノベーションを起こすには「つながり」と「行動」が重要である。
  • 真の改革に向けては明確な「ビジョン」の「浸透」が必要である。

イノベーションを起こすには「つながり」と「行動」が重要である

「つながり」と「行動」というミーシーではない2軸での表現ではありますが、自分の中では一番熱いテーマです。つながりとは、まさに人と人とのつながりを指していますが、つながりにも2つの要素があります。それは「弱いつながり」と「強いつながり」です。

「弱いつながり」による多様な接点(組織外やプライベートを含みます)を元にイノベーションの種を生み出し、組織内の「強いつながり」により実現に向けてドライブする。また、成果を導くためには、「行動」を起こす必要があるという話に続きます。

「行動」がなぜ大切かですが、答えは自分の中ではなくそれを利用するDMU*1にあるという考えから導かれています。環境の変化が早い現代においては、計画主義型のPDCAサイクルではなく、行動主義型のDo→Learn→Prototypeへのシフトが求められており、特にインターネット業界においてはABテストという手法で実用化されています。DMUの行動を調べるには実際に利用してもらうことが一番であり、よりユーザーが満足した成果を正とする考え方です。

よって、実行し、学習し、プロトタイプを素早く作り、グルグルと速いサイクルで回すことがより良いサービスや製品開発につながり、ひいてはイノベーションにつながると考えています。

真の改革に向けては明確な「ビジョン」の「浸透」が必要である

組織は、目的がない組織と目的がある組織の2つに分けることができます。目的がない組織の例としては家族です。家族は生まれながらに形成されます。一方で目的のある組織の例は企業です。企業はある特定の目的を持ったメンバーが集まり形成されます。その目的を明確にするために大切なものが「ビジョン」です。

「ビジョン」の無い組織は、何のために存在するのか、何のために集まっているのかが曖昧になります。短期的にはそれでも良いかもしれませんが、中長期的な組織の成長のためには「ビジョン」は欠かせません。ビジョンを通じて組織の一体感や本質的な価値を実感することができるからです。

また、その「ビジョン」は掲げているだけでは意味がありません。メンバー全員に浸透し、共通の理念として腹に落ちることで真の価値を発揮します。「ビジョン」に共感し、また、自身のキャリア・アンカーと組織のベクトルが一致することで個人と組織の成長がともに最大化します。結果的にイノベーションが起きると信じています。

人事は何ができるのか

上記を実現するために「採用」・「研修」・「人事制度」・「組織開発」という打ち手に落とし込みます。組織の理想の姿はどのようなものか、現状はどうか、理想と現状を埋めるための打ち手は何が最適か、といったことを考え、実行するのが役割です。

的確な打ち手を実行するためには、それぞれのツールを熟知する必要があります。「勝てる採用の戦い方」、「有効な研修や教育とはなにか」、「評価・報酬・等級の考え方」、「組織マネジメントの本質」を継続的に学び続けることが求められます。常に外部環境は変化し続けるからです。

自らの知識を陳腐化させることで自身の成長につなげ、知的資本というツールを使って組織の理想に向けて情熱を捧げることが人事の仕事の本質と捉えています。

まとめ

半年前には見えていないこともだいぶ見えるようになったとは思う一方、まだまだ見えていないことが沢山あるとも思っています。当初は1年で卒業しようと思っていましたが、2年間じっくりと勉強し、自分を成長させ、組織の成長に向けて貢献できればと考えています。

はてなでは一緒にイノベーションを起こす人材を募集しています!hatenacorp.jp

参考図書

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

企業変革力

企業変革力

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

組織開発ハンドブック―組織を健全かつ強固にする4つの視点

組織開発ハンドブック―組織を健全かつ強固にする4つの視点

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

参考資料

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*1:Decision Making Unit

ミニセッション「最高の組織をつくるために人事は何をすべきか」を行いました

気がつけば1か月以上も更新が滞っていました…

今日は、通っている学校の授業の1つに「イノベーションファシリテーション特論」があり、その報告をさせていただきます。

この授業は、イノベーションを促進するファシリテーターの役割を認識し、その原則・あり方を深く理解することを目的とし、自分の属する組織やプロジェクトでイノベーションを促進する、ファシリテーター役を担うための基礎を修得するものです。

今回の授業では、10分間の模擬ファシリテーションとして、「最高の組織をつくるために人事は何をすべきか」という問いをもとにブレインストーミングとドット投票によるミニセッションを行いました。

ミニセッションの進め方

持ち時間は10分でしたので以下のスケジュールで進めました。

時間(分) 内容
0 - 2 1. 問いを設定した背景
2 - 7 2. ブレインストーミング
7 - 8 3. ドット投票
8 - 10 4. 各チームからの一言とクロージングトーク

1. 問いを設定した背景

私は人事の仕事をしていますが、人事評価制度を運用したり、採用活動を行っています。人事は会社を少しでも良くするために日々の業務を行っていますが、世間一般として「働くのが楽しくない」、「会社が面白く無い」という声を聴くことが多いです。
このような現状は、会社を良くしたいと思っている人事が正しく課題認識をできていないことが原因ではないかと思いました。そして、普段はみなさんにお願いをすることが多い人事が、逆にみなさんからのアドバイスを頂くことで現状の課題を解決できるのではないかと考えました。

2.ブレインストーミング

以上の問いに対して、15名を4チームに分かれて頂き、5分間のブレインストーミングを行いました。
問いに設計した「最高の組織をつくるために人事は何をすべきか」ですが、「最高の組織」という定義が参加頂く方にとって曖昧だったため、「人事は何をすべきか」という問いと2つの問いが混在してしまいました。参加者が自分ごとになれる問いという観点からは設計が未熟ではありましたが、わずかな時間の中で複数のアイデアを上げて頂きました。

3. ドット投票と各チームからの一言

ブレインストーミングで上げられたアイデアを一人2票で多数決順に絞っていただいたのが以下のアイデアです。

  • 専任者に固定化するのではなく、全社員の持ち回りにすればよいのではないか。
  • 人事(「ひとごと」と読める)という言葉が悪いのではないか。
  • 人事が人事権にかかわらないのが良いのではないか。
  • 毎週金曜日の夕方に面談時間を確保し、ヒアリングと合わせて定時退社を促すのはどうか。
  • 思いを浸透させるために、評価のフィードバックを丁寧に行うべきではないか。
  • 人事がメンバーと同じ目線に立ち、思いを伝えるべきではないか。
  • 現場をよく知ることで初めて組織(人)をよく出来るのではないか。
  • 自社のことだけではなく、他社の人事を学ぶべきではないか。

気づき

チームのみなさんからの発表や講義終了後の飲み会の席でもお話をさせて頂きましたが、まずは人事が本気で組織を考えることが重要であると確信しました。また、他社の制度にも目を向け、人事が現場をよく知ることが必要という点もそのとおりだと思います。
人事を固定化せず持ち回りにするというアイデアも頂きました。管理部門に長くいることは、私自身も良くないと思っていますので、(中長期的には)受け入れ先がありましたら自分自身の異動も含めて検討をしたいです。

人事の仕事をB3Cで整理すると、(採用)市場を定義し、DMUである社員や採用候補者の方を明確に捉え、土俵と競合と自社のフレームワークで戦略を考えることが重要です。貴重な意見を頂きましたので、自分ゴトとして行動を起こしていきたいと思います。

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私が学んでいるのはK.I.T.虎ノ門大学院です。www.kanazawa-it.ac.jp

はてなでは人材を積極募集しています!hatenacorp.jp

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人事・総務の仕事に興味関心がある方へ

一昨日は久しぶりに過去にしんどかった経験を共有した戦友たちと会っていました。
いろいろな話をしている中で、ある友人から「人事・総務の仕事を行うことになったけど、仕事内容がよくわからないため、どうすれば知識が身につけられるか教えて欲しい。」と質問されました。こんな自分で良ければということでいろいろな話をさせていただきましたが、せっかくですのでこれまでどういう感じで自分自身が学んできたか、ブログにまとめたいと思います。また、せっかく書きますので以下の様な方を想定してわかりやすく書くことを心がけます。

  • 4月から人事・総務に異動になった方
  • 新入社員で人事・総務に配属になった方
  • 人事・総務が普段何やっているかよくわからないという方

人事・総務の仕事の全体像

人事・総務の仕事は会社によって多少の違いがあります。何故かと言うと人事・総務の仕事は会社の文化に連動する部分が多く、一概に定めることが難しいからです。
私が働くはてなの場合は以下の様な業務がありますが。社内活性化のほたて賞ハロウィンは他の会社にはなかなか無いかもしれません。

職務 カテゴリ 項目
人事 規程管理 人事関連規程
36協定・労使協定
給与・社会保険 労務管理
給与
社会保険雇用保険
採用 新卒
中途
アルバイト
採用イベント運営
教育・研修 インターンシップ
新卒
中途フォローアップ
メンバー
管理職
役員
人事制度・評価 制度見直し
評価
組織開発 組織の見直し
社内活性化 ほたて賞
納会
歓迎会/送別会
ハロウィン
新制度の企画
総務 株式事務 ストックオプション管理
増資等
株主総会・取締役会 株主総会運営
取締役会運営
資産管理 固定資産管理
総務もろもろ 稟議
印章管理
知財管理
損保・生保管理
ファシリティ管理 庶務全般
オフィス管理
法務 契約書管理 契約全般


一つ一つの業務を説明をしていくとそれだけでも結構なボリュームとなりますので割愛をしますが、業務が多岐に渡るとお分かりになるかと思います。これらの業務を中長期的な視点を持ちつつ、スピーディーに対応することが人事・総務に求められていることです。

どのような順番で学んできたか

自分の経験を振り返ると以下の様なキャリアパスを歩んできました。

1. 社内SE

新卒で入社した前々職ではシステムエンジニアをしていましたので、前職へは社内SEとして入社しました。その後前職がIPOを目指すということでその手伝いとして総務の仕事をするようになったことが管理系のキャリアのスタートです。

2. 総務

まずはじめに担当したのは稟議書の管理です。そもそも稟議という言葉の意味がわからなかったですが、高価な物を買ったり、人を採用したり、お金は発生しないが特別な判断が必要なことがあったときに上長に確認を取るために必要なものということを知りました。稟議の仕組み自体は合理的なため、取っ掛かりとしてはわかりやすかったと思います。

その後は上場準備の業務において、証券会社さんからの各種宿題や審査部さんへの回答のお手伝いすることを行いました。そのような中、少しずつ会社法や株式事務や株主総会・取締役会の運営を学んでいきました。会社法は株式会社で働く我々にとっては大切な法律の一つですので、総務職以外の方にもぜひ一度勉強をしていただきたいと思います。
会社は株主のものという基本を学んだのもこの頃だったと思います。 *1

3. 人事

そうこうしているうちに、無事IPOを果たしたのですが、上場準備を引っ張ってきた上司が退職をされました。退職後は残ったメンバーで業務を回すしか無いのですが、人事のことは全くわかりません。誰もやる人がいないので、自分に担当が回ってきました。

まずはじめにやったことは給与計算のチェックでした。これまで給与計算の経験がなかったにも関わらず、いきなりチェックをしろと言われたのですが、やる人がいないのでやるしかありません。給与計算の本を購入しなんとか乗り切ったのを憶えています。

その後は人事制度を改善したい!と会社に直訴し、経理や人事の他のメンバーと協力して人事制度の改定を行ったり、採用業務にも携わらせて頂きました。今であればもう少し上手いことできたのになと思うことも多々ありますが、必死に自分の頭を使って実行に移したことが今に生きていると思います。

4. 法務

法務の仕事を本格的にやり始めたのは今の会社に入社してからでした。ちょうどこの頃中小企業診断士の勉強も始めましたので、診断士科目の一つである「経営法務」を中心に「民法」や業務に関連の深い「著作権法」を学びました。法務は本当に奥が深く、自分レベルの知識では一人の力で業務をこなすのは難しいと考えています。そこで、法務に関して声を大きくして言いたいのは、必ず弁護士等の専門家のサポートが必要だということです。特に契約書が大切になってくるのは何かしらのトラブルが起きた場合です。万が一の際に備えて普段から専門家の意見を大切にすることを心がけてください。 *2

効率的な学習方法

ここまで至った経緯を振り返ってどうすれば効率的に知識を得ることが出来るのかを考えて見ました。

1. 良いロールモデルを見つけ、仕事の仕方をパクる

自分の場合は前職の上司がロールモデルでした。仕事に対する姿勢、判断の仕方、リスク管理能力、緊急時の対応方法…学ぶことは沢山ありました。人事・総務を初めて経験する方であれば自分よりも知識・経験がある人が同じ職場にいらっしゃると思いますので、仕事の仕方をパクることから始めるのが良いと思います。

2. 書籍等で学び、自分の頭で考え、実行する

上司がいなくなったあとは、自分でやるしかありませんので、自ら学び、自ら考え、自ら実行しました。今となっては、上司がいなくなったことが良かったと思っていまして、仕事に対する責任感がグッとあがりました。

3. 上記を繰り返す

一番大事なのは学び続ける姿勢を忘れないということだと思います。職場にロールモデルがいなければ社外には沢山いますし、法改正があれば新しい書籍も発行されます。学びに限界はないと思いますし、知識は陳腐化するものですので、学び続けることを心がけています。一足飛びに成長ができれば嬉しいのですが、失敗しながらも学び続けることが大切です。

まとめ

自分にとって幸運だったのは上場準備の仕事に携わることができたことです。上場準備は管理部門の総合力が試されると理解していますので、全方位的に学ぶ必要がありました。
また、人事や総務の仕事は1年単位で繰り返されることが結構あります。3年間ぐらい経験するとなんとなく全体像が理解できると思っています。理解が深まれば見えてくることも広がります。見えてくることが広がれば自分の考える視点も上がってきます。自身を高めるためにも学びを継続していきたいと考えています。

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*1:会社は誰の“ための”ものか、というのは、別途議論が必要だと思っています。

*2:とはいえ、自己研鑚も忘れずに。