中小企業を極める

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中長期の組織戦略の考え方

早くも転職して3か月が経ちました。これまでの仕事と一番変わった点は、与えられた課題に対して考えなければならない時間軸が長くなったことだと思います。具体的には、数年先の組織をイメージした上で、今の戦略・戦術・打ち手に落とし込むことが増えました。そのような中で、徐々にではありますが中長期の組織戦略が描かれつつあります。私自身が試行錯誤しながら作っている過程を言語化し、共有することで同じように苦戦している方のヒントになれば幸いです。

考えるプロセス

私の恩師である三谷宏治さんの仰る重要思考を借りれば、「ダイジなことから考え・決める」以外の順番はありません。重要思考では以下のアプローチと定義されています。
 目的・前提
  ↓
 大戦略
  ↓
 効用・中目標
  ↓
 ツール、方策

目的・大前提

「何を目的に組織戦略を立案するか」ですが、私は「経営戦略ないしは事業戦略に沿ったケイパビリティを高めるため」と置きました。常に意識しているチャンドラーの『Strategy and Structure』で書かれている通り、「組織と戦略は相互に深く係る必要がある」のです。戦略はポジショニングとケイパビリティの2軸をベースに考えますが、戦略の実現性を後押しするケイパビリティを高めることが組織戦略を立案する目的と考えています。

大戦略

次に「何をもとに大戦略を立案するか」ですが、BCGのマーティンリーブスが提唱した5つの戦略アプローチをベースにしました。なぜ、この戦略アプローチが適しているかというと、従来の戦略と比較して(改変可能性と予想困難性の2軸のとり方の)抽象度が高く、変化に時間がかかる組織戦略との相性が良いためです。
したがって、まずは事業特性をもとに5つのアプローチから適した大戦略を選定します。当社の場合は既存事業はクラシカル、新規事業はアダプティブ戦略と置きました。既存事業はビジネスモデルも確立されており、持続的イノベーションが求められます。一方で新規事業は不確実性が高いため、継続的実験が必要です。

次に、それぞれの戦略における有効な戦略策定・実行策が定められていますので、ケイパビリティのゴールを想定します。クラシカル戦略は「持続可能な競争優位」を築くために、「分析、計画立案、徹底的な実行」の3つのステップを順番に実行する、アダプティブ戦略は「素早く適応し続ける」ために、「多様化、選択、拡大」のループを素早く実行し続ける。これらが大戦略となります。

効用・中目標

次に「戦略に沿ったケイパビリティにおいて最も大事なこと」を決めます。クラシカル戦略の組織文化では「理念」や「自己実現」が大切であり、アダプティブ戦略の組織文化では「試行錯誤」が大切です。とはいえ、当社は、全社に共通するケイパビリティとして「人の幸せに貢献し、自己実現する集団である」という理念がありますので、共通する価値観として中心に位置づけています。
リーダーシップスタイルに注目すると、クラシカル戦略はフォーカス(目標設定はトップダウンで意思決定し、どこで勝つかを意思決定する)、アダプティブ戦略はフラット&オープン(細かい計画よりもコンテクストを共有する)が大切です。このように戦略に沿った中目標を定めることが必要です。
また、文化やリーダシップスタイルの浸透度を測るには、サーベイを実施して期待度と満足度のギャップで分析をする方法や、社員への定期アンケートを通じて差を取ることが考えられます。

ツール・方策

最後に「どうやって実現するか」を考えます。大きく分けて「HRM(人事制度)」「採用」「育成」の3つで考えます。例えば育成では、外部研修の受講、自社内での研修、OJTなどさまざまな手法がありますが、大切なことはゴールイメージを設定することです。個別の打ち手をバラバラに企画立案し実行に移すのではなく、ストーリーをもった設計をすることが大切です。そのために7Sのフレームワークで事前に整理することをお薦めします。
7Sでは当社の2つの異なる戦略(クラシカルとアダプティブ)において「何が共通化できて、何を別々にする必要があるのか」を決めます。分類した結果は以下の通りです。

共通化できるもの
  • 共有する価値観(理念・クレド
  • 組織風土(オープン・フラットな文化)
  • スキル(スクラム開発、UI・UX)
  • 人的資源(エンジニア、デザイナ、マーケティング、営業、CS)
    • ただし、チーム構成は別に考える
分けたほうが良いもの

考えてみてわかったのが、変えづらいソフトの4Sが共通化でき、変えやすいハードの3Sが分けたほうが良いものとなりました。結果的に、両者の戦略に共通化できるケイパビリティを備えていることがわかりました。次のステップは、変えないこと、変えるべきことを明確にし、「HRM(人事制度)」「採用」「育成」の具体的な施策に落とし込んで行きたいと思います。

まとめ

以上の通り思考の過程を整理してきましたが、最も大切なことは「経営戦略ないしは事業戦略との深い関わり」です。人事だけで組織戦略を立案するのではなく、事業との相互連携をしながら進める必要があります。また、ここまできてなんとか整理ができましたが、試行錯誤の繰り返しも大切です。様々な関係者に何度も壁打ちをしながら磨き上げていくことが良い戦略の必要条件と考えています。


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