組織を極める

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「はてなについて考える会」の企画・実施・振り返りをまとめました

私が働くはてなは7月決算のため、期末の時期を迎えています。私は、今期の目標の一つに「はてなについて考える会」という社員研修を企画・実施することを設定しました。
自分の目標に対する振り返りを行う意味も込めて、研修内容と気づきをエントリーにまとめ、今後の改善に活かしたいと思います。長くなりましたが、最後までお付き合いを頂けると幸いです。

はてなについて考える会」とは

はてなの組織開発に関しては、以下のエントリーにまとめましたが、「はてなについて考える会」は研修にフォーカスした取り組みです。
tapir320.hatenablog.jp

今回の研修は部門を横断して様々な職種のメンバーが集まる会としました。さらに1回きりの単発ではなく、全8回5ヶ月に及ぶ研修としました。定期的にディスカッションする場を持つことを前提に、以下の趣旨で企画しました。

日常の業務とは少し離れて、「はてな」という組織について考える会です。
組織活動を進める中では、「リーダーシップ」や「マネジメント」といったスキルが必要になることや、「採用」の面接官になったり、「教育・育成」において対話や評価をしたり、されたりすることがあります。これらのスキル・ロール・活動が何故必要なのか、また、スキルを身につけるためにはどのような考え方や行動が必要になるのかをディスカッション形式で学ぶ会です。

はてなについて考える会」を実施した背景

はてなはエンジニアやデザイナーを中心とした専門スキルの高い少数精鋭の組織です。はてなイノベーションを起こし続ける組織になるためには、専門スキルの深掘りだけではなく、専門スキル以外の幅を広げた考えを持ち、その考えを踏まえた行動に移すことが大事です。具体的には「個人の知性」を高め、「部門を超えたつながり」を持ち、「試行錯誤する力」を強化し挑戦し続けることです。私はこれらを実現する取り組みを「試行錯誤型組織開発」と名づけ、「はてなについて考える会」として具体化しました。
また、私自身の大学院の研究テーマをはてなの組織開発に取り入れることで、アカデミックな学びが実務においてどのような効果をもたらすのかを知りたいという目的もありました。

具体的な内容

進め方

はてなの研修の原則は経験学習です。今回はその中でもアクションラーニングの形式で実施しました。具体的には2週間を一つのサイクルとして、前半の1週間で事前スライドによる個人の予習をお願いし、後半の1週間のうち1時間を使ってワークショップを実施しました。
前半の事前スライドは、私が用意したスライドに対して音声での説明も補足し、オンラインで予習をして頂きます。後半のワークショップは、参加者のみなさんに能動的に参加して頂くため、事前スライドに即したテーマを設定し、1グループ5名程度に分かれてのディスカッションを行って頂きました。ワークショップの最後にディスカッションの内容を参加者全員で共有しました。
もちろん、研修の中身を理解していただくことが目的ではあるのですが、研修を行うこと自体も組織開発の効果の一つとして考えていました。他本部、多職種のメンバーが一堂に会し、部門を横断したコミュニケーションが生まれることで、新たなる価値創造に繋がると期待していました。

ゴール目標

以下の2点を研修後の目標と設定しました。

  • はてなについての理解が深まる
  • M3、S3*1で求められるリーダーシップや現場管理のスキルが高まる

一方で、今回の研修により短期的な成果が出るとは考えていません。今後の日常業務において継続的に学習する上での加速装置と位置づけ、中長期の成果につなげると位置づけました。

カリキュラム

今回実施したカリキュラムは以下のとおりです。実務で採用や評価の経験がある方を対象として、過去の経験を振り返りながら今後のチャレンジに繋げたいという意図がありました。

日程 テーマ 概要
第1回 組織開発とは何か? 組織開発とは何か、何故必要か。ビジョン・ミッション・バリューズについて。
第2回 はてなの人事制度とキャリア MコースとSコース*2の違い。なぜ、Sコースに進む人が多いのか。
第3回 採用について はてなの採用は何が大事か。中途採用と新卒採用の違い。はてなの採用フロー。採用面接の手法。
第4回 評価について はてなの目標設定と評価制度。良い面談と悪い面談。フィードバックが何故大事か。
第5回 報酬の考え方 はてなの報酬制度。金銭的報酬と非金銭的報酬の考え方。
第6回 人材育成(研修)について 経験学習の考え方。人事が考える理想の人材育成。1 on 1 MTGの意義
第7回 コミュニケーションについて コミュニケーションのスキルについて。適切なコンフリクト。
第8回 リーダーシップについて リーダーシップ論。真摯さ。人間性について。

受講者アンケートからの気づき

アンケートで回答頂いた内容は大きく分けると以下の3点です。

  • 第1回〜8回の理解度
  • 試行錯誤・知性・つながりについて
  • はてなについて考える会」の成果について

加えて任意の回答としてテキストによるフィードバックを頂きましたが、今回は上記の3点を振り返ります。

第1回〜8回の理解度

選択肢は以下の5つを用意し、各回の理解度を測りました。

  • 明確に説明することができる
  • なんとなく説明することができる
  • あまり説明できない
  • 全く説明できない
  • 欠席した

その中で、最も理解度が高かったのが「(第5回)報酬の考え方」です。
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45%の人が「明確に説明することができる」と回答し、35%の人が「なんとなく説明することができる」と回答しました。金銭的報酬と非金銭的報酬から成り立つ総報酬の考え方が伝わったことは嬉しく思います。

逆に最も理解度が低かったのが、「(第6回)人材育成(研修)について」です。
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50%の人が「あまり説明できない」と回答しました。この会は全8回のうち1回だけ講義形式にした回です。講義よりもワークショップ形式の方が受講者の理解度が高まることがわかりました。それ以前に講義の説明がわかりにくかったということもありますので、その点は次回以降改善します。

試行錯誤・知性・つながりについて

「試行錯誤する回数」「試行錯誤する人数」「部門を超えたコミュニケーション(つながり)」についての回答が以下のとおりです。
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「試行錯誤する回数」と「一緒に試行錯誤する人数」はそれぞれ30%、25%しか改善が見られませんでしたが、「部門を超えたコミュニケーション」が半数の人で増えたことは嬉しい成果です。職種を超えたつながりこそがイノベーションの種になると思います。


また、「知性について」の回答が以下のとおりです。
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質問に対して、20%の人が「行動が変わった」と答えてくれました。55%の人が「理解はしたが行動は変わっていない」とのことでしたので、どのように行動に落としこむべきかを自分自身も今一度考えたいと思います。

はてなについて考える会」の成果について

以下のとおり質問と回答を頂きました。

  • はてなについて考える会」は、事前アンケートで回答した参加理由を満たす内容でしたか?
    • 「大いに満足した」が35%、「そこそこ満足した」が50%
  • はてなについて考える会」は個人や組織の成果に繋がると思いますか?
    • 「大いに繋がると思う」が30%「そこそこ繋がると思う」が65%
  • はてなについて考える会」は組織の雰囲気を良くしましたか?
    • 「大いに良くした」が42.1%、「そこそこ良くした」が42.1%

一番嬉しかったのは、42.1%の人が組織の雰囲気を大いに良くしたという回答を頂けたことです。受講者の方には隔週1時間、さらに事前スライドを加えるともっと多くの時間を割いて頂きましたが、概ね満足を頂きホッとしました。

また、未受講のメンバーに対して「はてなについて考える会」の受講を進めますか?という質問に対しては、以下の回答を頂いています。
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他の人に勧めても良い内容としてある程度認めていただいたことは主催者として嬉しいことです。

今後に向けて

組織開発を組織の成果につなげるという観点からは、試行錯誤型組織開発の成果をどのように測るのか、ということを考えています。
一つの仮説として組織開発の成果を「雰囲気」で測るということに行き着きました。学術的には組織文化を構成する2つの考え方(「認知的文化」と「情緒的文化」)のうち、「情緒的文化」である「職場で人々がどのような感情を示すか」を測りたいということです。
なぜ、「情緒的文化」が大事かと言えば、はてなのように社員を大切にする組織においては、メンバーが共有する情緒的な理念、規範、成果、前提がポジティブに捉えられてこそ、組織パフォーマンスを高め、個人の仕事への満足度も高まるからです。雰囲気をどう測るのかにまだ答えは見いだせていませんが、私自身が試行錯誤することで答えを導き出したいと思います。

今回の「はてなについて考える会」の企画・実践は私自身にとっても非常に挑戦的な取り組みでした。このような機会を頂けた組織と参加頂いた受講者の方に感謝するとともに、今後の研究にも活かしていきたいと思います。また、継続的に実施することでイノベーションを起こし続ける組織を創りたいと考えています。

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!一緒に良い組織を作っていきたいと考えていますので、はてなの組織に共感頂ける方のエントリーをお待ちしております。
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このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:M3、S3とは当社の人事制度においてリーダー層を指します。

*2:Mコース:マネジメントコース、Sコース:スペシャリストコース