組織を極める

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仕事の仕方に関するアンケートの分析結果

先日、Facebookを通じた友人に「仕事の仕方に関するアンケート」を実施しました。シェアにご協力を頂いたみなさま、ありがとうございました。おかげさまで82件もの回答をいただくことができました。簡単ではありますが、本日はその分析結果をご報告させて頂きます。

調査の目的

変化が速く、不確定で、複雑で、曖昧と言われる時代において、ユーザーに価値あるサービスを届けるためには、仮説、実行、検証のプロセスを高速に回し、小さな失敗を積み重ねることが必要です。一言で言えば「試行錯誤する力」と定義できますが、「試行錯誤する力」とは何かを調べることを調査の目的とします。

仮説と検証したいこと

「試行錯誤は成果につながる」という仮説を検証するために、以下の3つを測ります。

  • どれくらいのスピードで試行錯誤をしているのか(頻度)
  • 失敗が起きてから試行錯誤をするとき、誰としているのか(行動)
  • 試行錯誤をするときはどのような感情なのか(感情)
  • 「良い試行錯誤」と「悪い試行錯誤」があるとして、「良い試行錯誤」とはどのようなものか。

定義

  • 試行錯誤とは
    • (小さな)Plan→(小さな)Prototype→(大きな)Learn→(大きな)Doのプロセスを言う。
  • 失敗とは
    • 失敗=能力と挑戦との差のこと。「挑戦>能力」の場合に失敗する。失敗は多すぎ(無謀な挑戦が多い)ても少なすぎ(挑戦をしていない)てもいけない。

アンケート分析

それでは、アンケートの問いと回答から分析を進めます。

試行錯誤は成果につながると思いますか?

91.5%の人が試行錯誤は成果につながると思っていることがわかりました。「試行錯誤」ということをポジティブに捉えていることがわかります。
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では、次に実際にどれくらいの人が試行錯誤をしているのか、を調べます。

失敗の数とPDCAの数から考える試行錯誤

失敗の数が多くPDCAの数も多い人は試行錯誤をしていると考え、以下の4象限に分類しました。その上で、「どれくらいのスピードで試行錯誤をしているのか」(仮説1)を検証しました。
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(左上)「1週間のPDCAの回数」が0 〜 4回で「1週間の失敗の数」が0 〜 4回

この方達は、PDCAの数も失敗の数も少ないです。PDCAの数と失敗の数が同等ということは、自分の能力・スキルにあった適切な挑戦をしていますが、頻度が少ないということです。

  • 試行錯誤の回数…× 試行錯誤の質…◯
(右上)「1週間のPDCAの回数」が5回以上で「1週間の失敗の数」が0 〜 4回

この方達は、PDCAの数は多いが失敗をしていません。自分の能力・スキルの範囲内での仕事をしているということです。職種や業種にもよりますが、試行錯誤という観点においては挑戦が不足していると言えます。

  • 試行錯誤の回数…× 試行錯誤の質…×
(左下)1週間のPDCAの回数」が0 〜 4回で「1週間の失敗の数」が5回以上

この方達は、PDCAの数以上に失敗をしているということです。自分の能力・スキルを超える取り組みをしていることは評価できますが、試行錯誤の最初に必要な「小さなPlan」が欠けているとも言えます。

  • 試行錯誤の回数…◯ 試行錯誤の質…×
(右下)1週間のPDCAの回数」が5回以上で「1週間の失敗の数」が5回以上

この方達は、PDCAの数も失敗の数も高速に回し、自分の能力・スキルにあった挑戦をしているということです。「良い試行錯誤」と言えそうです。

  • 試行錯誤の回数…◯ 試行錯誤の質…◯

以上から右下に位置する全体の7%の方が、私の定義における「良い試行錯誤」を実践しているとみなしました。91.5%の人が試行錯誤は成果につながると思っていながら、良い試行錯誤を行っている方は7%ということです。このギャップは大きいですね。

失敗をしたとき、どのような行動をしましたか?

次に、「失敗が起きてから試行錯誤をするとき、誰としているのか(仮説2)」を検証します。
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試行錯誤は「自分一人」で行うことが69.5%となり、2番目の「同僚」との差は36.6ポイントもありました。試行錯誤は他者に相談しづらいようです。

試行錯誤したときの感情を教えて下さい。

最後に、「試行錯誤をするときはどのような感情なのか(仮説3)」を検証します。
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「心配」「予測」「喜び」の順に多いことがわかりました。試行錯誤は、心配だが予測もでき嬉しいものであると言えます。
また、今回の結果をもとに感情の相関を調べたところ、「喜び」と「驚き」の相関係数は0.44となりました。「喜び」や「驚き」を高めることでポジティブな感情となり、良い試行錯誤に繋がりそうです。

まとめ

  • 良い試行錯誤をしている人は約7%。
    • →高速に「(小さな)Plan→(小さな)Prototype→(大きな)Learn→(大きな)Do」を回す必要があることを認知することで、良い試行錯誤は増えそう。
  • 試行錯誤は周囲に相談しづらく、約7割は一人でやる。
    • →試行錯誤を奨励する組織風土が必要。
  • 「心配」「予測」「喜び」の順に感情が多い。
    • →不安を取り除き、失敗、挑戦を肯定することで、試行錯誤が増えるのではないか。

成果につながる試行錯誤を増やすためには、経営スタイルや組織風土といったソフト面の改善が必須のようです。具体的には、小さな失敗を奨励し、周囲へ気軽に相談できる状態を作ることだと思います。また、感情面の配慮も重要で、前向きに挑戦できる仕組み作りといったハード面の改善も考えられます。

このように見ると当たり前のことですが、環境を改善することが組織の成果につながるとすれば、人事の取り組むべき課題も見えてくると思います。今後は、試行(作ること・試すこと)と錯誤(まちがいについて考えること・調べること)に分けて考え、「試行」と「錯誤」にどのような差があるのかを考えてみたいと思います。

さらには属性情報とのクロス集計や、定性的なコメントからの気づきもあると思いますので、貴重なデータを深掘りしたいと思います。最終的には「試行錯誤する力」はどのようにして高めることができるのか、を調べたいと思います。
ご協力を頂いたみなさま、ありがとうございました!

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