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システム開発契約における間違いやすいポイント

こんにちは。早いもので前回の更新から2週間が経ってしまいました。近況ですが、法務関連の勉強をよくしています。法務は本当に奥が深く、どこまで学んでも底なし沼的な感覚です。だからこそ弁護士という一流資格があるわけですが、われわれ実務家はトライアンドエラーをしながら学んで行くことになります。

今回は最近自分で学んだり、人から教わったりしたシステム開発契約における間違いやすいポイントについてまとめたいと思います。

請負契約と委託契約の考え方

請負契約は成果物の完成を求められるが、委託契約は完成を求められないという話がよく言われますが、委託契約という法的な区分はありません。

  • 請負契約は典型契約。委託契約は典型契約ではない。委任(準委任)契約が民法上の典型契約。
  • 委託契約は請負、委任、あるいは両者を混合している場合に使われる表現。

また、そもそも契約とは実態を元に判断すべきだとのことです。要するに、契約書のタイトルになんて書かれていようが、完成に重きを置いている内容であれば請負契約の要素が強いとなります。

  • 請負契約はモノの完成を主たる目的としているが、委任・準委任は事務処理あるいはモノの完成がない成果にに応じて対価を支払う。
    • 完成した成果物を引き渡すことで対価を得る場合は請負契約
    • 成果物を求めない委任・準委任の例としては、医療行為等

検収という表現

広く一般に検収という言葉が使われていますが、法律では検収という表現はありません。請負契約における納品完了は検査の合格とするのが正しいです。

  • 契約書には法的に正確な表現やお互いの齟齬がない表現を使う

また、検査は請負契約では意識しますが、売買契約でもあり得ます。モノを引き渡すということであれば検査という概念が生じます。逆にモノの引き渡しがない場合は検査という概念はありません。

瑕疵担保期間について

商法は6ヶ月、民法は1年と覚えていませんか?厳密には違います。商取引においてモノの売買における契約の場合は6ヶ月の瑕疵担保期間となります。

  • 商取引においてモノを作って継続的に販売する場合は、製造物供給契約となり瑕疵担保期間が6ヶ月。

一般的なシステム開発における請負契約の場合は売買ではありませんので、瑕疵担保期間は民法が適用され1年になるということですね。ただ、請負契約でも請負+売買の規定が適用され、瑕疵担保期間は6ヶ月となることもあり得えますので都度判断が必要です。

所有権の問題

原則は、知財著作権)が作成者に原始的に発生します。契約で定められていない場合は、作成者に留保されるということです。請負契約の場合、所有権が移転するため知財関係も移転すると勘違いをしていることもあるかとは思いますが、所有権の移転は有体物に限るということですね。

  • 知財は原始的に作成者に発生する。

しかし、システム開発の請負契約の場合、金額が異常に高い場合や、その他のやりとりを総合的に解釈し黙示の合意があるとみなされる場合は、移転する可能性もあります。

まとめ

改めて調べてみると間違った解釈が多かったことに自分でも驚きました。契約自由の原則はありますが、フェアで適切な契約を結ぶためにも日々勉強は必要です。そして自分の知識に対する過信も禁物です。契約書の締結前には弁護士へのレビューも忘れずに行ないましょう。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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