組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

異なる職種を公平に評価するには

さて、前回に続いて生産性つながりの読書感想文です。

人事評価の難しい課題の一つに「異なる職種をどうやって公平に評価するか」があります。元マッキンゼーの採用マネージャーである伊賀泰代さんが書かれた生産性の中にそのヒントがありましたので、考えてみます。

伊賀さんは、管理部門等の異なる職種(人事・総務・法務等)は、前年度の生産性と今年度の生産性の変化率で評価するという手法を上げていました。要するに、部門ごとに異なるKPIだとしても、生産性の変化率に換算することで比較可能だよね、ということです。例えば、新卒を10名採用するという成果(アウトプット)に対して投入した労力(インプット)をどれだけ減らしたかを前年度と比較することで、成長を測るということです。

なるほどなぁと思った一方で、これを実現するためには前提となる成立要件があると考えました。

全ての社員に生産性の伸びを求め続ける

最初、この考え方を見たときに、そうはいってはアウトプットの量の基準を揃える必要があるのではないかと考えました。新入社員とパートナーでは求められる成果の量が違うため、レベルごとの量の基準を統一する必要があると考えたのです。しかしながら、それは僕の考えが甘いのかなと思いました。

コンサルティング会社は、Up or Outの前提があるため、役員と言えども、成果が出ない場合は退職を求められるとありました。そこから気づいたことは、新入社員からパートナーになっても、生産性を同じ比率で上げ続けなければならないということか、と考えました。どれだけレベルが上っても毎年30%成長が求められ続けるのであれば、量の基準は必要なく、質の比較のみで成り立ちます。これってすごい制度だなと思いました。

そのために優秀な人材のみを採用する

毎年30%の成長を求められるのであれば、当然優秀な人を採用しなければなりません。そのためには採用が大事です。以前伊賀さんの講演を伺った際には、将来パートナーになりうる人を落とさないための採用を工夫しているという話がありました。優秀な人が全てのベースですので、確かにそこは力を入れるよなと合点がいきました。

それでも伸び悩む社員をトレーニングする

そうはいっても伸び悩む人もいるので、トレーニングする仕組みがあるということも本の中に書かれていました。伸び悩む人を切り捨てていては、どれだけ採用を頑張っても組織の成長に追いつかないためです。

まとめ

評価の方法の一部だけを切り取って自社に当てはめるのではなく、なぜそれができるのかを考えることは大切だと思いました。そして普通の会社ではこの仕組みは回らないだろうなとも思いました。人事制度全体として上手く回る仕組みが構築できないのであれば、職種を超えた比較を辞めるというのも一つの手だと思います。

自社の組織をしっかりと診断して、何が最適かを考えることは大事だと思いました。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

風呂掃除を夜にすることにした話

早いもので前回のブログ更新から3か月以上経っていました…
この数か月間取り組んできた論文も昨日提出し、なんとか一段落です。あとはK.I.T.での学びのサマリーをPowerPointにまとめ公聴会を終えれば、2年間の社会人大学院生活が終わります。

さて、そんなちょっとした谷間の時間を使ってちきりんさんの
自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方
を読みました。「生産性」がテーマの本ですので、このブログも30分で書き上げるという目標を設定しましたが、途中で風呂掃除やら洗濯干しの割り込み作業が入りました。プライベートの時間でも生産性を意識しなければ、割り込みの感覚もなく無駄な時間を過ごしているのかもしれません。


肝心の本の話ですが、前半は「生産性=アウトプット÷インプット」であり、生産性を高めるにはアウトプットを増やすか、インプットを減らすかの2択である。しかしながら、インプットだけ増やしてしまうケースや、アウトプットを増やすためにインプットも増やすケースもあり、これでは生産性が上がったとは言えないよね、というお話がありました。
また、そもそもアウトプットとインプットを正しく理解するために考えようという話もありました。アウトプットを理解するためには「欲しいものを明確にしよう」。インプットを理解するためには、「お金と時間の使い方を見える化しよう」とのことです。お金と時間を見える化した図表もありました。

後半は、生産性を高めるためには、仕事をする時間を減らそう(決してサボろうということではなく)という話とそもそも全部をやる必要が無いよねという話がありました。仕事をする時間を減らすための、5つの具体的な手法が上げられていましたので、興味のある方はぜひご一読ください。


プライベートでの生産性向上を実践するため、風呂掃除の時間を見直し、夜にやってみました。お風呂から出た後は、給水ホースを使って洗濯機を回すのですが、洗濯完了後にすぐ風呂掃除をすることにしたのです。考えてみれば夜洗うほうが汚れも落ちやすいですし、子どもに風呂掃除を邪魔されることもなく効率的に進みます。そして何よりも子どもと過ごす朝の貴重な時間を増やすことができると考えました。


同じことをやるにしても時間の場所をずらすだけで生産性の向上につながると思いました。ちょっとしたことかもしれませんが、この積み重ねが大きいのかもしれません。明日の朝からは、子どもとの大切な時間が増えると思います。

RAINBOW CROSSING TOKYOに行ってきました

ゼミがおやすみということで、『企業とLGBTがともに「自分らしくはたらく」を考える1日』と題したRAINBOW CROSSING TOKYO
lgbtcareer.org
に行ってきました。LGBT当事者の方をはじめ、先進的な取り組みをされている企業の生の声を聞くことができ、大変勉強になりました。

当社もダイバーシティ施策の一環として、8月1日より就業規則等の社内規定における「配偶者」の定義を同性や事実婚のパートナーを含むものに変更しました。合わせて、制度を作って終わりではなくマネージャー向けのLGBT研修を実施することで、ソフト面の浸透も進めています。とはいえ、まだまだ取り組みは必要だと思いますので、本日の学びを社内に持ち帰らせていただくとともに、ブログでも共有したいと思います。

セッションメモ

はじめに

  • 主催Re:Bitさん。今年初開催。企業とLGBTアライが集まれば良いなということで立ち上げた。
  • LGBTの本質は、見た目でわからないということ。
  • 国内のLGBTの人口比率は、7.6%。(2015電通ダイバーシティ・ラボ調べ)左利きと同じくらい。
  • セクシャリティアイデンティティの一部。
  • 職場の同僚(一人にでも)にカミングアウトしているLGBTの割合4.8%。
    • LGBT人口比率とカミングアウトの比率を掛け合わせると、600人の職場で一人カミングアウトできるかできないかという割合になる。
  • LGBT当事者の方が求職時に困難を感じる現状がある。
  • 社員の13人に一人、お客様の13人に一人がLGBTであることを認識すること。
  • LGBT施策がある職場はダイバーシティの意識が高く、浸透する。
  • 約7割のLGBT当事者が、企業のLGBTに関する取り組みが就職にプラスに働くと回答している。
  • LGBTのマーケットは5.9兆円あると言われている。

働く上で困ること

LGBT当事者の方がパネルディスカッション形式でお話

日常のやりとりで困ったこと
  • 男性の上司が多く、何気ないやりとりで困った。
    • ◯◯さん彼女がいるの?という質問。
    • 今夜空いているならお姉さんのいる店に行こうよ。という誘い。
就活で困ったこと
  • Xジェンダーなので、男性の服装で働くのか、女性の服装で働くのか、困っていた。
  • 履歴書には男性の性別だが、服装は女性の服装で働くことを決めた。
  • 人事担当に相談した際に、歩み寄りがある企業とない企業の差が大きかった。
トイレ・制度で困ったこと
  • 各フロアにユニバーサルデザインのトイレがない現状。
  • 取引先の人に会うタイミングでは他のフロアのトイレを使った。
  • 緊急連絡先に関して、何かあったときに連絡をするパートナーの存在を知らせることができなかった。

嬉しかったこと

  • アメリカでゲイの事件があったとき、パートナーや家族の方は大丈夫、という自然な声がけがあった。
  • 1年目のときにOJTで客先を回ったときに、クライアントから男性として扱うのか、女性として扱うのか、という問い合わせが先輩に対してあった。その時の先輩の回答が「一営業として扱ってください」という回答であり、その考え方がとてもうれしく、信頼できると感じた。

設備や制度といったハードの問題以上に、理解を深めていくことが職場での働きやすさにつながる。

面接で困ったこと

  • セクシャリティは個性の中の一部であって、大きな問題ではあるが、一つの個性である。
  • 人事担当は配慮があるが、現場の面接になったタイミングで、配慮のない言葉があった。
    • 自分も2丁目好きなんだよね。とか
  • 制度と現場の実態とのギャップ
    • 研修をしていることは安心につながる。
    • LGBTの方も相談できるハラスメント窓口がある。それだけで嬉しいと思った。

LGBT当事者の受け入れに対して取り組むべきこと

  • アライを増やすことが、いちばん大事である。
    • たとえ傷つくことがあったとしても、わかってくれている人がいることが安心につながる。
    • アライバッジで見える化するなど。
  • 方針と文化の両方が大事である。
    • そして、中立的な知識を身につけること。

LGBT企業の取り組み

GAP
  • GAPの特徴
    • Individuality
    • You do you
Unilever
  • 一つ一つが変わらなくて良い。という意味が込められたロゴ。
  • LGBTだからといって特別に何かやっているわけではない。むしろ個性が当り前。

まとめ

大事なことは正しい知識を身に着けて理解を深めることであり、制度を作ったことが終わりではないということ。また、人事自らがアライとして理解のある取り組みを推進していきたいと思いました。特別視することではなく、一人の人間として、一つの個性として自然体で受け入れることができる組織を目指したいと思います。
幸いにして、制度導入時の説明ではポジティブに捉えてくれるメンバーが多かったのですが、引き続き理解を含め、多様性を持った組織文化を目指します。

はてなでは、働きがいと働きやすさを高次元でバランスさせる組織を作るべく、一緒に働く社員を積極採用中です。特にMackerelセールスエンジニアとWebオペレーションエンジニアは積極採用中ですので、エントリーをお待ちしています!

hatenacorp.jp
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EQテスト(2回目)を受けました

久しぶりにブログの更新です。高校野球とリオオリンピックがほぼ同時に終わり、一気に夏の終わりを感じています。(そのような中、来週夏休みを頂くのですが…)
先週1週間は学校も夏季休暇のため登校はできなかったのですが、夏休み前にEQテストを受けました。入学したタイミングでも一度測っていましたので、成長?を確認する意味でも1回目と2回目の遷移をまとめます。

はじめに

EQとは、こころの知能指数とも言われるもので、IQと対比して取り上げられることが多いです。IQは広く一般的に認知されている通り、言語や論理・数学的な能力を図る指標であり、先天性が大きいものです。一方でEQは、感情の知性を図る指標で、後天的に高めることができると言われています。また、EQは仕事における成果との相関も高いことから注目されています。

今回私が受講したのは、アドバンテッジEQI*1です。アドバンテッジEQIでは、能力を備えているかではなく、使っているか(発揮しているか)という行動を測定することでうまくEQを使えているかを類推しているとのことです。EQ理論提唱者らが設立したEQグローバルアライアンスにより監修された検査とのことで、信頼度も高いと言えます。
蛇足ですが、アドバンテッジEQIを監修したのは私がリーダーシップ論でお世話になった相川先生と知り、改めて偉大さを思い知りました。

結果の見方

アドバンテッジEQIは3つの知性、8つの能力、24の要素から構成されます。

  • 心内知性
    • 自己認識力
    • ストレス共生
    • 気力創出力
  • 対人関係知性
  • 状況判断知性
    • 対人受容力
    • 共感力

以下、アドバンテッジEQIの解説書より引用です。

「心内知性」とは、「自分の感情や気持ち、考えなどの心理的な状態を、自分自身が明確に捉えることであり、自分の内面にどれくらい、どのような関心を向けているか」をみています。
「対人関係知性」とは、「周囲の人に接するときに発揮される知識や技能であり、自分から他者にどれくらい、どのような働きかけをしているか」をみています。
「状況判断知性」とは、「周囲の状況を客観的に観察して判断したり、自分に対する周囲の様々な表現と反応・態度を正しく解読していくことであり、周囲からどれくらい、どのような情報収集をしているか」をみています。

結果

概要

前回(2015/3/29)と今回(2016/8/12)の結果は以下のとおりとなりました。
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3つの知性でレベルアップしていますので、絶対的にはEQが高まったと言えます。一方で、EQIで大事な事は自分の強みと弱みを相対的に見ることとの解説もありましたので、24要素の偏差値の遷移を深掘ります。下がったものワースト3と上がったものベスト3のそれぞれを見てみます。

偏差値が下がったもの

社会的自己認識(46→41)▲5

社会的自己認識が低い人は、「自分が他人からどう見られているかに関心がなく、他人からの評価もあまり気にしない。他人からの評価よりも、自分がどうしたいのかで行動することが多い。」という傾向があるとのことです。言われてみれば図星ですね…もともと偏差値50を下回っていたものが、学校の学びにより更に加速しているということは要注意かもしれません。

感情的被影響性(47→43)▲4

感情的被影響性が低い人は、「人の感情に影響を受けることが少なく、自他の感情を区別することが多い。そのため、周囲の感情に左右されずに、冷静な決断ができる場合が多い。ときに冷淡な印象を与える。」傾向があるとのことです。こちらも自分を振り返って納得できます。役割柄、厳しい状況判断をする必要が増えたことが起因しているのでしょうか。ケースバイケースでの使い分けが必要な素養と思いますので、適切な対応を心がけたいと思います。

私的自己意識(52→50)▲2

私的自己意識が低い人は、「自分のこころの動きや内面にあまり興味や関心がなく、自分の気持ちを振り返ることが少ない。時々、状況に流される傾向がある」という傾向があるとのことです。この点は、正直あまりピンとこなかったのですが、高めるためのヒントにかかれていたのが、「独りになる時間をつくる」とあり、合点がいきました。そもそも私は「独り」になることがとても嫌いであり、そう考えると自分自身のことを考えていないのだなぁとわかりました。常に動き続けているのが好きなのですが、時にはゆっくりと内省しようと思います。

偏差値が上がったもの

セルフ・エフィカシー(48→67)+19

そもそもセルフ・エフィカシーとは、「自分の知識や能力への自信、物事への肯定的な見方のこと」です。セルフ・エフィカシーが高い人は、「何をするにも自信をもって取り組むことが多い。自分の能力の高さや経験に自信を持っているので、これからもうまくやっていけると考えている。」傾向があるとのことです。セルフ・エフィカシーが高まった理由は、まさにK.I.T.での学びが大きいと思います。一方で、慢心しては行けないと思いますので、謙虚に学び続けることを忘れないようにします。

精神安定性(50→63)+13

精神安定性が高い人は、「感情を害されるような状況におかれても、動揺せずに冷静沈着に対処することが多い。気分のムラが少なく、安定して物事に取り組む傾向がある」とのことです。自分の感情が高ぶりそうなときに、認知と感情を分けて考えることは心がけていますので、その点が高まった理由だと思います。リーダーシップ論で学んだソーシャルスキルが活きている結果と考えます。

楽観性(52→63)+11

楽観性が高い人は、「物事の肯定的な側面に着目し『なんとかなる』と明るい見通しを持つことが多い。明日は今日よりも事態が良くなるだろうと、常に将来に希望を託す傾向がある。」とのことです。楽観性は以前から自分の強みだと思っていたのですが、再認識できました。とはいえ、リスク思考が低いことも管理部門としては問題だと思いますので、慎重な判断もできるように注意します。

まとめ

全般的にはEQの偏差値が高まり、嬉しい結果となりました。自分でもK.I.T.に通い始めてからは非連続的な成長を遂げたと感じていますので、結果に現れたことも嬉しいです。嬉しい理由は、アドバンテッジEQIの説明にもあったとおり、行動が変わったことが証明されたからです。
ちょうど先週の土曜日のディスカッションで、「何のために学んでいるのか、何のために生きているのか」という問いを頂きました。学ぶために学んでいるのではなく、学びを実務や人生に活かすために学んでいますので、これからも行動を起こし続け、人生を変えていきたいと思います。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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*1:株式会社アドバンテッジ リスク マネジメントの登録商標です。

「はてなについて考える会」の企画・実施・振り返りをまとめました

私が働くはてなは7月決算のため、期末の時期を迎えています。私は、今期の目標の一つに「はてなについて考える会」という社員研修を企画・実施することを設定しました。
自分の目標に対する振り返りを行う意味も込めて、研修内容と気づきをエントリーにまとめ、今後の改善に活かしたいと思います。長くなりましたが、最後までお付き合いを頂けると幸いです。

はてなについて考える会」とは

はてなの組織開発に関しては、以下のエントリーにまとめましたが、「はてなについて考える会」は研修にフォーカスした取り組みです。
tapir320.hatenablog.jp

今回の研修は部門を横断して様々な職種のメンバーが集まる会としました。さらに1回きりの単発ではなく、全8回5ヶ月に及ぶ研修としました。定期的にディスカッションする場を持つことを前提に、以下の趣旨で企画しました。

日常の業務とは少し離れて、「はてな」という組織について考える会です。
組織活動を進める中では、「リーダーシップ」や「マネジメント」といったスキルが必要になることや、「採用」の面接官になったり、「教育・育成」において対話や評価をしたり、されたりすることがあります。これらのスキル・ロール・活動が何故必要なのか、また、スキルを身につけるためにはどのような考え方や行動が必要になるのかをディスカッション形式で学ぶ会です。

はてなについて考える会」を実施した背景

はてなはエンジニアやデザイナーを中心とした専門スキルの高い少数精鋭の組織です。はてなイノベーションを起こし続ける組織になるためには、専門スキルの深掘りだけではなく、専門スキル以外の幅を広げた考えを持ち、その考えを踏まえた行動に移すことが大事です。具体的には「個人の知性」を高め、「部門を超えたつながり」を持ち、「試行錯誤する力」を強化し挑戦し続けることです。私はこれらを実現する取り組みを「試行錯誤型組織開発」と名づけ、「はてなについて考える会」として具体化しました。
また、私自身の大学院の研究テーマをはてなの組織開発に取り入れることで、アカデミックな学びが実務においてどのような効果をもたらすのかを知りたいという目的もありました。

具体的な内容

進め方

はてなの研修の原則は経験学習です。今回はその中でもアクションラーニングの形式で実施しました。具体的には2週間を一つのサイクルとして、前半の1週間で事前スライドによる個人の予習をお願いし、後半の1週間のうち1時間を使ってワークショップを実施しました。
前半の事前スライドは、私が用意したスライドに対して音声での説明も補足し、オンラインで予習をして頂きます。後半のワークショップは、参加者のみなさんに能動的に参加して頂くため、事前スライドに即したテーマを設定し、1グループ5名程度に分かれてのディスカッションを行って頂きました。ワークショップの最後にディスカッションの内容を参加者全員で共有しました。
もちろん、研修の中身を理解していただくことが目的ではあるのですが、研修を行うこと自体も組織開発の効果の一つとして考えていました。他本部、多職種のメンバーが一堂に会し、部門を横断したコミュニケーションが生まれることで、新たなる価値創造に繋がると期待していました。

ゴール目標

以下の2点を研修後の目標と設定しました。

  • はてなについての理解が深まる
  • M3、S3*1で求められるリーダーシップや現場管理のスキルが高まる

一方で、今回の研修により短期的な成果が出るとは考えていません。今後の日常業務において継続的に学習する上での加速装置と位置づけ、中長期の成果につなげると位置づけました。

カリキュラム

今回実施したカリキュラムは以下のとおりです。実務で採用や評価の経験がある方を対象として、過去の経験を振り返りながら今後のチャレンジに繋げたいという意図がありました。

日程 テーマ 概要
第1回 組織開発とは何か? 組織開発とは何か、何故必要か。ビジョン・ミッション・バリューズについて。
第2回 はてなの人事制度とキャリア MコースとSコース*2の違い。なぜ、Sコースに進む人が多いのか。
第3回 採用について はてなの採用は何が大事か。中途採用と新卒採用の違い。はてなの採用フロー。採用面接の手法。
第4回 評価について はてなの目標設定と評価制度。良い面談と悪い面談。フィードバックが何故大事か。
第5回 報酬の考え方 はてなの報酬制度。金銭的報酬と非金銭的報酬の考え方。
第6回 人材育成(研修)について 経験学習の考え方。人事が考える理想の人材育成。1 on 1 MTGの意義
第7回 コミュニケーションについて コミュニケーションのスキルについて。適切なコンフリクト。
第8回 リーダーシップについて リーダーシップ論。真摯さ。人間性について。

受講者アンケートからの気づき

アンケートで回答頂いた内容は大きく分けると以下の3点です。

  • 第1回〜8回の理解度
  • 試行錯誤・知性・つながりについて
  • はてなについて考える会」の成果について

加えて任意の回答としてテキストによるフィードバックを頂きましたが、今回は上記の3点を振り返ります。

第1回〜8回の理解度

選択肢は以下の5つを用意し、各回の理解度を測りました。

  • 明確に説明することができる
  • なんとなく説明することができる
  • あまり説明できない
  • 全く説明できない
  • 欠席した

その中で、最も理解度が高かったのが「(第5回)報酬の考え方」です。
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45%の人が「明確に説明することができる」と回答し、35%の人が「なんとなく説明することができる」と回答しました。金銭的報酬と非金銭的報酬から成り立つ総報酬の考え方が伝わったことは嬉しく思います。

逆に最も理解度が低かったのが、「(第6回)人材育成(研修)について」です。
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50%の人が「あまり説明できない」と回答しました。この会は全8回のうち1回だけ講義形式にした回です。講義よりもワークショップ形式の方が受講者の理解度が高まることがわかりました。それ以前に講義の説明がわかりにくかったということもありますので、その点は次回以降改善します。

試行錯誤・知性・つながりについて

「試行錯誤する回数」「試行錯誤する人数」「部門を超えたコミュニケーション(つながり)」についての回答が以下のとおりです。
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「試行錯誤する回数」と「一緒に試行錯誤する人数」はそれぞれ30%、25%しか改善が見られませんでしたが、「部門を超えたコミュニケーション」が半数の人で増えたことは嬉しい成果です。職種を超えたつながりこそがイノベーションの種になると思います。


また、「知性について」の回答が以下のとおりです。
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質問に対して、20%の人が「行動が変わった」と答えてくれました。55%の人が「理解はしたが行動は変わっていない」とのことでしたので、どのように行動に落としこむべきかを自分自身も今一度考えたいと思います。

はてなについて考える会」の成果について

以下のとおり質問と回答を頂きました。

  • はてなについて考える会」は、事前アンケートで回答した参加理由を満たす内容でしたか?
    • 「大いに満足した」が35%、「そこそこ満足した」が50%
  • はてなについて考える会」は個人や組織の成果に繋がると思いますか?
    • 「大いに繋がると思う」が30%「そこそこ繋がると思う」が65%
  • はてなについて考える会」は組織の雰囲気を良くしましたか?
    • 「大いに良くした」が42.1%、「そこそこ良くした」が42.1%

一番嬉しかったのは、42.1%の人が組織の雰囲気を大いに良くしたという回答を頂けたことです。受講者の方には隔週1時間、さらに事前スライドを加えるともっと多くの時間を割いて頂きましたが、概ね満足を頂きホッとしました。

また、未受講のメンバーに対して「はてなについて考える会」の受講を進めますか?という質問に対しては、以下の回答を頂いています。
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他の人に勧めても良い内容としてある程度認めていただいたことは主催者として嬉しいことです。

今後に向けて

組織開発を組織の成果につなげるという観点からは、試行錯誤型組織開発の成果をどのように測るのか、ということを考えています。
一つの仮説として組織開発の成果を「雰囲気」で測るということに行き着きました。学術的には組織文化を構成する2つの考え方(「認知的文化」と「情緒的文化」)のうち、「情緒的文化」である「職場で人々がどのような感情を示すか」を測りたいということです。
なぜ、「情緒的文化」が大事かと言えば、はてなのように社員を大切にする組織においては、メンバーが共有する情緒的な理念、規範、成果、前提がポジティブに捉えられてこそ、組織パフォーマンスを高め、個人の仕事への満足度も高まるからです。雰囲気をどう測るのかにまだ答えは見いだせていませんが、私自身が試行錯誤することで答えを導き出したいと思います。

今回の「はてなについて考える会」の企画・実践は私自身にとっても非常に挑戦的な取り組みでした。このような機会を頂けた組織と参加頂いた受講者の方に感謝するとともに、今後の研究にも活かしていきたいと思います。また、継続的に実施することでイノベーションを起こし続ける組織を創りたいと考えています。

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!一緒に良い組織を作っていきたいと考えていますので、はてなの組織に共感頂ける方のエントリーをお待ちしております。
営業職は積極採用中です!
hatenacorp.jp


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*1:M3、S3とは当社の人事制度においてリーダー層を指します。

*2:Mコース:マネジメントコース、Sコース:スペシャリストコース

人事・総務として働く上で大事だと考えていること

人事・総務の仕事をしていく中で、大事だと考えていることを5つ共有します。こんなことを考えながら日々の仕事に取り組んでいます。

管理部門の全般に渡る知識を得る

管理部門の仕事は大きく分けて以下のとおりです。

  • 経営企画
  • 広報・IR
  • 経理
  • 人事
  • 総務
  • 法務
  • 社内システム
  • 内部監査

人事・総務は、自分の職域を超えたことも網羅的に知っておくことが大事です。人事・総務の仕事の一つに管理部門の潤滑油という役割があります。各部門を横断的につなぐためには、それぞれのメンバーがどのようなことを行っているのかを知ることが大事です。他人を知ろうとせずに、コミュニケーションが上手く行くはずがありません。他部門をリスペクトするためにも興味関心を持ちましょう。

専門分野の深掘り

自分の専門分野を深掘りすることが大事です。人事・労務であれば社労士、法務であれば弁護士という専門家に委託することはあっても、会社としての判断を行うのは自分たちである、という自覚を持ちましょう。専門家と対等に話をするためにも、専門家と話ができるレベルの専門知識を身につける必要があります。また、専門家はこちらが提示した一部の情報を元に判断をします。前提となる背後にある情報を踏まえた判断ではないことに気をつけましょう。

自らに厳しくあること

プロフィットセンター部門との一番の違いは、納期設定のコントロールができることです。時として、期限を伸ばすことやタスク自体をなかったことにしがちですが、自律心を持つことが大事です。お天道様は見ていますので、現状に甘んじずに組織の成果を最大化するための努力を怠らないようにしましょう。そのためには日々の研鑽を怠らないことです。

本来の目的を見失わないこと

何のために仕事をしているのかを見失わないようにしましょう。人事・総務・法務・社内システムといった役割は、ただの役割であって組織が求める成果に向けた機能の一つです。自分の仕事は何のために行っているのか、自分の仕事の成果によってどのような価値をもたらすことができるのかを常に考え続けましょう。何ができるのか、ということは大事ではありません。何を提供しているのか、が大事です。

自分を否定すること

専門領域のスペシャリストとしての誇りを持ちつつも、自分自身を否定することも大事です。自分の仕事は自分のために行っているのではなく、組織のメンバーのために行っています。どれだけ自己満足をしたとしても、組織のメンバーに届かなければ何の価値もありません。成果を測るのは自分ではないことを忘れないようにしましょう。

自戒の念を込めてまとめてみました。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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自分は人事として何のために働いているのか

中二病っぽいタイトルですが、研究テーマの総本山と感じているので、この機会にまとめたいと思います。今日は、人事として最終的に目指すものは何なのかを考えます。

人事の仕事の中でも最近注力しているのは組織開発です。組織開発の自分なりの定義は、「組織を活性化するためのありとあらゆる打ち手」としています。人事の仕事は「採用」「教育・研修」「人事制度運用(評価・育成)」「労務管理」等に大別されますが、これらを横断的に捉えて組織の課題を解決していく取り組みが組織開発です。

人事の会社における役割は、組織を活性化することで成果につなげることだと思いますが、組織が活性化した状態はどのように測れば良いのでしょうか。

人事は、「組織」と「従業員個人」の両者の視点で責任を負うものかもしれないというのが指導教官の指摘でした。そう考えると、組織開発の効果は、「組織」と「個人」の両者を分けて測ることが求められます。次に考えるべきことは「組織」と「個人」の何を測るのか、ということです。

「組織」の測り方

私の仮説は、「成果と組織の求める雰囲気*1を測ること」が大事であるということです。今月のハーバードビジネスレビューにあった「組織に必要な感情のマネジメント」からヒントを得ました。組織文化は認知的文化と情緒的文化に大別され、見落とされがちな情緒的文化によって職場におけるメンバーの感情の表出が決まる、ということでした。

7Sの中心にある通り、組織においては「Shared Values」≒「組織文化」が大事です。
組織文化という曖昧なものは、2つに分けて考えることができ、ミッション・ビジョン・バリューズ等により言語化されたものが認知的文化につながります。もう一方の組織の情緒的な理念・規範・成果はメンバー間の関係性において構築され変化するものであり、情緒的文化につながります。
後者の情緒的文化の「組織の求めに応じたフィット感」を測ることができれば組織開発の効果も測れるのではないか、と考えています。

「個人」の測り方

個人の満足度の測り方は、各種研究がなされていると思います。リンクアンドモチベーションさんが行っているようなモチベーションをエンジニアリングするという発想での要因分析や、Great Place to Workさんが行っている働きがいのある会社があります。

まとめ

組織開発の効果測定として、「成果と組織の求める雰囲気を測る」という切り口は悪くないかもしれません。「組織の求める雰囲気」とは、私がいつも肝に銘じている「組織は戦略に従う」にある通り、戦略との相互連携から決定されます。人事が戦略を理解し、どのような雰囲気を創りだすのかを明示した上で、そのフィット感を測ることができれば、組織開発の効果測定ができると言えるのではないでしょうか。

組織の求める雰囲気を創ることは、人事の究極的な仕事であり、これこそが自分が働く価値ではないかと思いました。ドゥアブルからデリバラブルと言われるように何を提供できるかが大事です。

雰囲気という曖昧なものをどこまで明瞭化することができるのか、今後も考え続けます。

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*1:雰囲気とは感情心理学でいうムードを想定しています。