組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

「はてなについて考える会」の企画・実施・振り返りをまとめました

私が働くはてなは7月決算のため、期末の時期を迎えています。私は、今期の目標の一つに「はてなについて考える会」という社員研修を企画・実施することを設定しました。
自分の目標に対する振り返りを行う意味も込めて、研修内容と気づきをエントリーにまとめ、今後の改善に活かしたいと思います。長くなりましたが、最後までお付き合いを頂けると幸いです。

はてなについて考える会」とは

はてなの組織開発に関しては、以下のエントリーにまとめましたが、「はてなについて考える会」は研修にフォーカスした取り組みです。
tapir320.hatenablog.jp

今回の研修は部門を横断して様々な職種のメンバーが集まる会としました。さらに1回きりの単発ではなく、全8回5ヶ月に及ぶ研修としました。定期的にディスカッションする場を持つことを前提に、以下の趣旨で企画しました。

日常の業務とは少し離れて、「はてな」という組織について考える会です。
組織活動を進める中では、「リーダーシップ」や「マネジメント」といったスキルが必要になることや、「採用」の面接官になったり、「教育・育成」において対話や評価をしたり、されたりすることがあります。これらのスキル・ロール・活動が何故必要なのか、また、スキルを身につけるためにはどのような考え方や行動が必要になるのかをディスカッション形式で学ぶ会です。

はてなについて考える会」を実施した背景

はてなはエンジニアやデザイナーを中心とした専門スキルの高い少数精鋭の組織です。はてなイノベーションを起こし続ける組織になるためには、専門スキルの深掘りだけではなく、専門スキル以外の幅を広げた考えを持ち、その考えを踏まえた行動に移すことが大事です。具体的には「個人の知性」を高め、「部門を超えたつながり」を持ち、「試行錯誤する力」を強化し挑戦し続けることです。私はこれらを実現する取り組みを「試行錯誤型組織開発」と名づけ、「はてなについて考える会」として具体化しました。
また、私自身の大学院の研究テーマをはてなの組織開発に取り入れることで、アカデミックな学びが実務においてどのような効果をもたらすのかを知りたいという目的もありました。

具体的な内容

進め方

はてなの研修の原則は経験学習です。今回はその中でもアクションラーニングの形式で実施しました。具体的には2週間を一つのサイクルとして、前半の1週間で事前スライドによる個人の予習をお願いし、後半の1週間のうち1時間を使ってワークショップを実施しました。
前半の事前スライドは、私が用意したスライドに対して音声での説明も補足し、オンラインで予習をして頂きます。後半のワークショップは、参加者のみなさんに能動的に参加して頂くため、事前スライドに即したテーマを設定し、1グループ5名程度に分かれてのディスカッションを行って頂きました。ワークショップの最後にディスカッションの内容を参加者全員で共有しました。
もちろん、研修の中身を理解していただくことが目的ではあるのですが、研修を行うこと自体も組織開発の効果の一つとして考えていました。他本部、多職種のメンバーが一堂に会し、部門を横断したコミュニケーションが生まれることで、新たなる価値創造に繋がると期待していました。

ゴール目標

以下の2点を研修後の目標と設定しました。

  • はてなについての理解が深まる
  • M3、S3*1で求められるリーダーシップや現場管理のスキルが高まる

一方で、今回の研修により短期的な成果が出るとは考えていません。今後の日常業務において継続的に学習する上での加速装置と位置づけ、中長期の成果につなげると位置づけました。

カリキュラム

今回実施したカリキュラムは以下のとおりです。実務で採用や評価の経験がある方を対象として、過去の経験を振り返りながら今後のチャレンジに繋げたいという意図がありました。

日程 テーマ 概要
第1回 組織開発とは何か? 組織開発とは何か、何故必要か。ビジョン・ミッション・バリューズについて。
第2回 はてなの人事制度とキャリア MコースとSコース*2の違い。なぜ、Sコースに進む人が多いのか。
第3回 採用について はてなの採用は何が大事か。中途採用と新卒採用の違い。はてなの採用フロー。採用面接の手法。
第4回 評価について はてなの目標設定と評価制度。良い面談と悪い面談。フィードバックが何故大事か。
第5回 報酬の考え方 はてなの報酬制度。金銭的報酬と非金銭的報酬の考え方。
第6回 人材育成(研修)について 経験学習の考え方。人事が考える理想の人材育成。1 on 1 MTGの意義
第7回 コミュニケーションについて コミュニケーションのスキルについて。適切なコンフリクト。
第8回 リーダーシップについて リーダーシップ論。真摯さ。人間性について。

受講者アンケートからの気づき

アンケートで回答頂いた内容は大きく分けると以下の3点です。

  • 第1回〜8回の理解度
  • 試行錯誤・知性・つながりについて
  • はてなについて考える会」の成果について

加えて任意の回答としてテキストによるフィードバックを頂きましたが、今回は上記の3点を振り返ります。

第1回〜8回の理解度

選択肢は以下の5つを用意し、各回の理解度を測りました。

  • 明確に説明することができる
  • なんとなく説明することができる
  • あまり説明できない
  • 全く説明できない
  • 欠席した

その中で、最も理解度が高かったのが「(第5回)報酬の考え方」です。
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45%の人が「明確に説明することができる」と回答し、35%の人が「なんとなく説明することができる」と回答しました。金銭的報酬と非金銭的報酬から成り立つ総報酬の考え方が伝わったことは嬉しく思います。

逆に最も理解度が低かったのが、「(第6回)人材育成(研修)について」です。
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50%の人が「あまり説明できない」と回答しました。この会は全8回のうち1回だけ講義形式にした回です。講義よりもワークショップ形式の方が受講者の理解度が高まることがわかりました。それ以前に講義の説明がわかりにくかったということもありますので、その点は次回以降改善します。

試行錯誤・知性・つながりについて

「試行錯誤する回数」「試行錯誤する人数」「部門を超えたコミュニケーション(つながり)」についての回答が以下のとおりです。
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「試行錯誤する回数」と「一緒に試行錯誤する人数」はそれぞれ30%、25%しか改善が見られませんでしたが、「部門を超えたコミュニケーション」が半数の人で増えたことは嬉しい成果です。職種を超えたつながりこそがイノベーションの種になると思います。


また、「知性について」の回答が以下のとおりです。
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質問に対して、20%の人が「行動が変わった」と答えてくれました。55%の人が「理解はしたが行動は変わっていない」とのことでしたので、どのように行動に落としこむべきかを自分自身も今一度考えたいと思います。

はてなについて考える会」の成果について

以下のとおり質問と回答を頂きました。

  • はてなについて考える会」は、事前アンケートで回答した参加理由を満たす内容でしたか?
    • 「大いに満足した」が35%、「そこそこ満足した」が50%
  • はてなについて考える会」は個人や組織の成果に繋がると思いますか?
    • 「大いに繋がると思う」が30%「そこそこ繋がると思う」が65%
  • はてなについて考える会」は組織の雰囲気を良くしましたか?
    • 「大いに良くした」が42.1%、「そこそこ良くした」が42.1%

一番嬉しかったのは、42.1%の人が組織の雰囲気を大いに良くしたという回答を頂けたことです。受講者の方には隔週1時間、さらに事前スライドを加えるともっと多くの時間を割いて頂きましたが、概ね満足を頂きホッとしました。

また、未受講のメンバーに対して「はてなについて考える会」の受講を進めますか?という質問に対しては、以下の回答を頂いています。
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他の人に勧めても良い内容としてある程度認めていただいたことは主催者として嬉しいことです。

今後に向けて

組織開発を組織の成果につなげるという観点からは、試行錯誤型組織開発の成果をどのように測るのか、ということを考えています。
一つの仮説として組織開発の成果を「雰囲気」で測るということに行き着きました。学術的には組織文化を構成する2つの考え方(「認知的文化」と「情緒的文化」)のうち、「情緒的文化」である「職場で人々がどのような感情を示すか」を測りたいということです。
なぜ、「情緒的文化」が大事かと言えば、はてなのように社員を大切にする組織においては、メンバーが共有する情緒的な理念、規範、成果、前提がポジティブに捉えられてこそ、組織パフォーマンスを高め、個人の仕事への満足度も高まるからです。雰囲気をどう測るのかにまだ答えは見いだせていませんが、私自身が試行錯誤することで答えを導き出したいと思います。

今回の「はてなについて考える会」の企画・実践は私自身にとっても非常に挑戦的な取り組みでした。このような機会を頂けた組織と参加頂いた受講者の方に感謝するとともに、今後の研究にも活かしていきたいと思います。また、継続的に実施することでイノベーションを起こし続ける組織を創りたいと考えています。

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!一緒に良い組織を作っていきたいと考えていますので、はてなの組織に共感頂ける方のエントリーをお待ちしております。
営業職は積極採用中です!
hatenacorp.jp


このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:M3、S3とは当社の人事制度においてリーダー層を指します。

*2:Mコース:マネジメントコース、Sコース:スペシャリストコース

人事・総務として働く上で大事だと考えていること

人事・総務の仕事をしていく中で、大事だと考えていることを5つ共有します。こんなことを考えながら日々の仕事に取り組んでいます。

管理部門の全般に渡る知識を得る

管理部門の仕事は大きく分けて以下のとおりです。

  • 経営企画
  • 広報・IR
  • 経理
  • 人事
  • 総務
  • 法務
  • 社内システム
  • 内部監査

人事・総務は、自分の職域を超えたことも網羅的に知っておくことが大事です。人事・総務の仕事の一つに管理部門の潤滑油という役割があります。各部門を横断的につなぐためには、それぞれのメンバーがどのようなことを行っているのかを知ることが大事です。他人を知ろうとせずに、コミュニケーションが上手く行くはずがありません。他部門をリスペクトするためにも興味関心を持ちましょう。

専門分野の深掘り

自分の専門分野を深掘りすることが大事です。人事・労務であれば社労士、法務であれば弁護士という専門家に委託することはあっても、会社としての判断を行うのは自分たちである、という自覚を持ちましょう。専門家と対等に話をするためにも、専門家と話ができるレベルの専門知識を身につける必要があります。また、専門家はこちらが提示した一部の情報を元に判断をします。前提となる背後にある情報を踏まえた判断ではないことに気をつけましょう。

自らに厳しくあること

プロフィットセンター部門との一番の違いは、納期設定のコントロールができることです。時として、期限を伸ばすことやタスク自体をなかったことにしがちですが、自律心を持つことが大事です。お天道様は見ていますので、現状に甘んじずに組織の成果を最大化するための努力を怠らないようにしましょう。そのためには日々の研鑽を怠らないことです。

本来の目的を見失わないこと

何のために仕事をしているのかを見失わないようにしましょう。人事・総務・法務・社内システムといった役割は、ただの役割であって組織が求める成果に向けた機能の一つです。自分の仕事は何のために行っているのか、自分の仕事の成果によってどのような価値をもたらすことができるのかを常に考え続けましょう。何ができるのか、ということは大事ではありません。何を提供しているのか、が大事です。

自分を否定すること

専門領域のスペシャリストとしての誇りを持ちつつも、自分自身を否定することも大事です。自分の仕事は自分のために行っているのではなく、組織のメンバーのために行っています。どれだけ自己満足をしたとしても、組織のメンバーに届かなければ何の価値もありません。成果を測るのは自分ではないことを忘れないようにしましょう。

自戒の念を込めてまとめてみました。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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自分は人事として何のために働いているのか

中二病っぽいタイトルですが、研究テーマの総本山と感じているので、この機会にまとめたいと思います。今日は、人事として最終的に目指すものは何なのかを考えます。

人事の仕事の中でも最近注力しているのは組織開発です。組織開発の自分なりの定義は、「組織を活性化するためのありとあらゆる打ち手」としています。人事の仕事は「採用」「教育・研修」「人事制度運用(評価・育成)」「労務管理」等に大別されますが、これらを横断的に捉えて組織の課題を解決していく取り組みが組織開発です。

人事の会社における役割は、組織を活性化することで成果につなげることだと思いますが、組織が活性化した状態はどのように測れば良いのでしょうか。

人事は、「組織」と「従業員個人」の両者の視点で責任を負うものかもしれないというのが指導教官の指摘でした。そう考えると、組織開発の効果は、「組織」と「個人」の両者を分けて測ることが求められます。次に考えるべきことは「組織」と「個人」の何を測るのか、ということです。

「組織」の測り方

私の仮説は、「成果と組織の求める雰囲気*1を測ること」が大事であるということです。今月のハーバードビジネスレビューにあった「組織に必要な感情のマネジメント」からヒントを得ました。組織文化は認知的文化と情緒的文化に大別され、見落とされがちな情緒的文化によって職場におけるメンバーの感情の表出が決まる、ということでした。

7Sの中心にある通り、組織においては「Shared Values」≒「組織文化」が大事です。
組織文化という曖昧なものは、2つに分けて考えることができ、ミッション・ビジョン・バリューズ等により言語化されたものが認知的文化につながります。もう一方の組織の情緒的な理念・規範・成果はメンバー間の関係性において構築され変化するものであり、情緒的文化につながります。
後者の情緒的文化の「組織の求めに応じたフィット感」を測ることができれば組織開発の効果も測れるのではないか、と考えています。

「個人」の測り方

個人の満足度の測り方は、各種研究がなされていると思います。リンクアンドモチベーションさんが行っているようなモチベーションをエンジニアリングするという発想での要因分析や、Great Place to Workさんが行っている働きがいのある会社があります。

まとめ

組織開発の効果測定として、「成果と組織の求める雰囲気を測る」という切り口は悪くないかもしれません。「組織の求める雰囲気」とは、私がいつも肝に銘じている「組織は戦略に従う」にある通り、戦略との相互連携から決定されます。人事が戦略を理解し、どのような雰囲気を創りだすのかを明示した上で、そのフィット感を測ることができれば、組織開発の効果測定ができると言えるのではないでしょうか。

組織の求める雰囲気を創ることは、人事の究極的な仕事であり、これこそが自分が働く価値ではないかと思いました。ドゥアブルからデリバラブルと言われるように何を提供できるかが大事です。

雰囲気という曖昧なものをどこまで明瞭化することができるのか、今後も考え続けます。

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*1:雰囲気とは感情心理学でいうムードを想定しています。

仕事の仕方に関するアンケートの分析結果

先日、Facebookを通じた友人に「仕事の仕方に関するアンケート」を実施しました。シェアにご協力を頂いたみなさま、ありがとうございました。おかげさまで82件もの回答をいただくことができました。簡単ではありますが、本日はその分析結果をご報告させて頂きます。

調査の目的

変化が速く、不確定で、複雑で、曖昧と言われる時代において、ユーザーに価値あるサービスを届けるためには、仮説、実行、検証のプロセスを高速に回し、小さな失敗を積み重ねることが必要です。一言で言えば「試行錯誤する力」と定義できますが、「試行錯誤する力」とは何かを調べることを調査の目的とします。

仮説と検証したいこと

「試行錯誤は成果につながる」という仮説を検証するために、以下の3つを測ります。

  • どれくらいのスピードで試行錯誤をしているのか(頻度)
  • 失敗が起きてから試行錯誤をするとき、誰としているのか(行動)
  • 試行錯誤をするときはどのような感情なのか(感情)
  • 「良い試行錯誤」と「悪い試行錯誤」があるとして、「良い試行錯誤」とはどのようなものか。

定義

  • 試行錯誤とは
    • (小さな)Plan→(小さな)Prototype→(大きな)Learn→(大きな)Doのプロセスを言う。
  • 失敗とは
    • 失敗=能力と挑戦との差のこと。「挑戦>能力」の場合に失敗する。失敗は多すぎ(無謀な挑戦が多い)ても少なすぎ(挑戦をしていない)てもいけない。

アンケート分析

それでは、アンケートの問いと回答から分析を進めます。

試行錯誤は成果につながると思いますか?

91.5%の人が試行錯誤は成果につながると思っていることがわかりました。「試行錯誤」ということをポジティブに捉えていることがわかります。
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では、次に実際にどれくらいの人が試行錯誤をしているのか、を調べます。

失敗の数とPDCAの数から考える試行錯誤

失敗の数が多くPDCAの数も多い人は試行錯誤をしていると考え、以下の4象限に分類しました。その上で、「どれくらいのスピードで試行錯誤をしているのか」(仮説1)を検証しました。
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(左上)「1週間のPDCAの回数」が0 〜 4回で「1週間の失敗の数」が0 〜 4回

この方達は、PDCAの数も失敗の数も少ないです。PDCAの数と失敗の数が同等ということは、自分の能力・スキルにあった適切な挑戦をしていますが、頻度が少ないということです。

  • 試行錯誤の回数…× 試行錯誤の質…◯
(右上)「1週間のPDCAの回数」が5回以上で「1週間の失敗の数」が0 〜 4回

この方達は、PDCAの数は多いが失敗をしていません。自分の能力・スキルの範囲内での仕事をしているということです。職種や業種にもよりますが、試行錯誤という観点においては挑戦が不足していると言えます。

  • 試行錯誤の回数…× 試行錯誤の質…×
(左下)1週間のPDCAの回数」が0 〜 4回で「1週間の失敗の数」が5回以上

この方達は、PDCAの数以上に失敗をしているということです。自分の能力・スキルを超える取り組みをしていることは評価できますが、試行錯誤の最初に必要な「小さなPlan」が欠けているとも言えます。

  • 試行錯誤の回数…◯ 試行錯誤の質…×
(右下)1週間のPDCAの回数」が5回以上で「1週間の失敗の数」が5回以上

この方達は、PDCAの数も失敗の数も高速に回し、自分の能力・スキルにあった挑戦をしているということです。「良い試行錯誤」と言えそうです。

  • 試行錯誤の回数…◯ 試行錯誤の質…◯

以上から右下に位置する全体の7%の方が、私の定義における「良い試行錯誤」を実践しているとみなしました。91.5%の人が試行錯誤は成果につながると思っていながら、良い試行錯誤を行っている方は7%ということです。このギャップは大きいですね。

失敗をしたとき、どのような行動をしましたか?

次に、「失敗が起きてから試行錯誤をするとき、誰としているのか(仮説2)」を検証します。
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試行錯誤は「自分一人」で行うことが69.5%となり、2番目の「同僚」との差は36.6ポイントもありました。試行錯誤は他者に相談しづらいようです。

試行錯誤したときの感情を教えて下さい。

最後に、「試行錯誤をするときはどのような感情なのか(仮説3)」を検証します。
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「心配」「予測」「喜び」の順に多いことがわかりました。試行錯誤は、心配だが予測もでき嬉しいものであると言えます。
また、今回の結果をもとに感情の相関を調べたところ、「喜び」と「驚き」の相関係数は0.44となりました。「喜び」や「驚き」を高めることでポジティブな感情となり、良い試行錯誤に繋がりそうです。

まとめ

  • 良い試行錯誤をしている人は約7%。
    • →高速に「(小さな)Plan→(小さな)Prototype→(大きな)Learn→(大きな)Do」を回す必要があることを認知することで、良い試行錯誤は増えそう。
  • 試行錯誤は周囲に相談しづらく、約7割は一人でやる。
    • →試行錯誤を奨励する組織風土が必要。
  • 「心配」「予測」「喜び」の順に感情が多い。
    • →不安を取り除き、失敗、挑戦を肯定することで、試行錯誤が増えるのではないか。

成果につながる試行錯誤を増やすためには、経営スタイルや組織風土といったソフト面の改善が必須のようです。具体的には、小さな失敗を奨励し、周囲へ気軽に相談できる状態を作ることだと思います。また、感情面の配慮も重要で、前向きに挑戦できる仕組み作りといったハード面の改善も考えられます。

このように見ると当たり前のことですが、環境を改善することが組織の成果につながるとすれば、人事の取り組むべき課題も見えてくると思います。今後は、試行(作ること・試すこと)と錯誤(まちがいについて考えること・調べること)に分けて考え、「試行」と「錯誤」にどのような差があるのかを考えてみたいと思います。

さらには属性情報とのクロス集計や、定性的なコメントからの気づきもあると思いますので、貴重なデータを深掘りしたいと思います。最終的には「試行錯誤する力」はどのようにして高めることができるのか、を調べたいと思います。
ご協力を頂いたみなさま、ありがとうございました!

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JBCC2016に出場します

久しぶりにブログの更新です。今回は、水曜日から始まるJBCCについて決意表明をしたいと思います。

JBCCとは、日本企業が抱える問題点・課題をケース分析を通じて提言する、ビジネススクールで学ぶ学生向けのコンペディションです。正式名称は、日本ビジネススクール・ケース・コンペティションで、今回7回目の開催です。私が学ぶK.I.T.虎ノ門大学院は昨年初出場し、見事本戦に勝ち上がりました。
今回は約200チームが予選に出場すると言われていますが、本戦に残るのは20チームです。本戦では20チームがさらに5つのブロックに分けられ、ブロックを勝ち上がった5チームで優勝を競います。

JBCCへの出場動機ですが、昨年の先輩方が挑戦されているのを見て、なんとなく自分も出場したいなとは思っていました。これまでの学びを総合的にアウトプットする場でもありますし、事業再生の第一線で活躍されている方々を中心とした審査員に自分たちの提案がどの程度刺さるのかというのを試してみたいと思ったからです。

私のチームは、お金周りに強みを持つYさん、事業戦略に強みを持つHさん、リサーチに強みを持つKさん、私という4名で構成しました。そして私は僭越ながらリーダーを務めさせて頂きます。私よりもキャリアのある3名のリーダーとして何ができるのか、リーダーシップ論の学びを活かして貢献したいと考えます。

5/18(水)にいよいよケースの発表です。この1年の学びをフルに活かして、全力で挑戦したいと思います!出るからには結果も残します!!

立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムのウェルカムキャンプを参観しました

昨日・本日と、立教大学のビジネリーダーシッププログラムのウェルカムキャンプを参観させて頂きました。
このキャンプの受講者は、今年の4月に入学したばかりの入学式前の新入生(約400名)です。私が到着した時にはアイスブレイクの真っ最中でしたが、運営が学生主体でアクティブ・ラーニングを取り入れたファシリテーションが大変勉強になりました。

学生が主体で運営をしている

運営組織は、学生のみでまかなわれているとのことです。今回のキャンプの運営はもちろんですが、授業が始まってからもStudent Assistant(SA)やCouse Assistant(CA)と言われる先輩学生が授業をサポートします。もちろん今回の運営にもSA、CAは関わっています。Student Assistantは18名*1、Couse Assistantは16名。それぞれの役割は、担当教員に寄り添いクラス運営に深く入り込んでいくのがSAで、クラスを横断的に俯瞰し各クラスで得た学びのノウハウを共有するのがCAとのことでした。
教員の参加ももちろんあるのですが、基本的にはオブザーブに徹しており、司会進行を含めて学生が行っていました。

プログラムの内容

プログラムは以下のとおりです。400名をファシリテートするのが学生のみ、というのは驚きですよね。アイスブレイクも上手に取り入れられており、個人的に引き出しを増やすこともできました。プログラムの要所にあった先輩学生のプレゼンテーションも堂々としており、1年間の学びの成果を垣間見ることができました。

1日目

  • 参観ガイダンス
  • 学部紹介、ミニプロジェクト(アイスブレイク)
  • ミニプロジェクト(グループワーク)
  • 決勝プレゼン&クロージング

2日目

  • 参観ガイダンス
  • 1日目の振り返り
  • 質問会議。質問力向上を目的とした先輩コーチとの質問を中心とした会議
  • キャリアを考えるセッション&クロージング

学部での学び

新入生は16のクラスに分かれて学びを進めるとのことです。担当教員ごとにクラスに分かれ、先に説明したSAやCAが授業をサポートするとのことでした。少人数制でゼミも含めて学びを進めるというところが私の学ぶK.I.T.と通じるところを感じます。カリキュラムもMBAさながらでマーケティング、マネジメント、アカウンティング・ファイナンス、コミュニケーションの領域を学ぶとのことです。これだけ実践的な学びがあれば、企業に入社後の活躍も想像できます。

受講した感想

大学教育は大きく変わっているのだなぁと感じました。受動的な学びの場ではなく、アクティブ・ラーニングを取り入れた主体的な学習にシフトしています。ワークショップや会議の進め方を入学1日目から学ぶという立教大学経営学部の先進的な取り組みに本気で驚きを覚えました。

一方で、企業における人材育成・組織開発はそこまでついていっていないのが現状と思います。学術的な理論を背景とした学びの変化を企業における組織開発にも反映していかねばと刺激を頂いた2日間でした。

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*1:60名を超える応募があり、その中から選抜をされた18名とのことでした。

知性と成果の相関から考える組織開発の効果測定

なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践」をいまさらながら読みました。購入したのは昨年の4月だったと思うので、かれこれ1年の積読です。個人及びグループ内の能力開発や変革に関する内容で、今の自分には良いタイミングだったとポジティブに捉えています。

私が一番印象的だったことは「知性*1は何歳になっても高めることができる」ということです。「知性の段階ごとの主体客体関係」という図においては、時間に応じて3段階で知性を高めることができるとされていました。もちろん、時間が経てば誰でも知性を高めることができるということではなく、個人の成長が必要にはなりますが。

以下、私なりの解釈で3段階の知性をまとめたいと思います。

知性に関する3段階

1.環境順応型知性

第1の段階では、周囲に対して自分がどのように貢献をできるのか、ということを中心に考えます。所属する組織の価値基準に照らして判断するという段階です。自らの行動のためには、第三者のものさしが必要というレベルです。

2.自己主導型知性

第2段階になると、自らの価値基準を構築します。このレベルに到達すると、自らを律して主体的に行動できるようになります。自らの信念に基づき、リーダーシップを発揮します。

3.自己変容型知性

第3段階に到達すると、自らを正しいと信じつつも、自らの限界にも気づくようになります。真の正解を導くためには、自らの仮説を修正することを厭わないというレベルです。時には自らを客観視し、矛盾や反対を受け入れることができるようになります。


続いて面白かったのは、これらの知性の段階とビジネスにおける成果には相関があるという事実です。2つの異なる測定方法により結果が一致したとのことですので、信頼すべき結果と思います。有名企業のリーダーを対象にした調査においては、自己主導型の知性を身に着けている方は約5割にとどまり、自己変容型の知性となると1%しか存在しないということです。これは感慨深いですね…


もう一つ。知性のレベルは行動にも影響を及ぼし、知性は測定可能ということです。これは、組織開発の効果測定のヒントになりました。人間を測るには「行動を測る」ということに間違いはなさそうで、さらに「知性」の軸で分類ができそうです。組織全体の知性を測ることができれば、ケイパビリティを定量化できるかもしれないなぁと妄想しております。引き続き頑張ります!



P.S.
この本のメインのテーマは、タイトルの通り人と組織が変われない理由を明確にした上で「いかにして組織を変革するか」です。そのメカニズムは事例を含めて本文に詳細に掲載されています。私の興味関心は、知性の測定にフォーカスされていますが、多くの部分は個人やチームの変革に関する内容であることを補足させて頂きます。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:知能ではなく、「知性」です。念のため。