組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムのウェルカムキャンプを参観しました

昨日・本日と、立教大学のビジネリーダーシッププログラムのウェルカムキャンプを参観させて頂きました。
このキャンプの受講者は、今年の4月に入学したばかりの入学式前の新入生(約400名)です。私が到着した時にはアイスブレイクの真っ最中でしたが、運営が学生主体でアクティブ・ラーニングを取り入れたファシリテーションが大変勉強になりました。

学生が主体で運営をしている

運営組織は、学生のみでまかなわれているとのことです。今回のキャンプの運営はもちろんですが、授業が始まってからもStudent Assistant(SA)やCouse Assistant(CA)と言われる先輩学生が授業をサポートします。もちろん今回の運営にもSA、CAは関わっています。Student Assistantは18名*1、Couse Assistantは16名。それぞれの役割は、担当教員に寄り添いクラス運営に深く入り込んでいくのがSAで、クラスを横断的に俯瞰し各クラスで得た学びのノウハウを共有するのがCAとのことでした。
教員の参加ももちろんあるのですが、基本的にはオブザーブに徹しており、司会進行を含めて学生が行っていました。

プログラムの内容

プログラムは以下のとおりです。400名をファシリテートするのが学生のみ、というのは驚きですよね。アイスブレイクも上手に取り入れられており、個人的に引き出しを増やすこともできました。プログラムの要所にあった先輩学生のプレゼンテーションも堂々としており、1年間の学びの成果を垣間見ることができました。

1日目

  • 参観ガイダンス
  • 学部紹介、ミニプロジェクト(アイスブレイク)
  • ミニプロジェクト(グループワーク)
  • 決勝プレゼン&クロージング

2日目

  • 参観ガイダンス
  • 1日目の振り返り
  • 質問会議。質問力向上を目的とした先輩コーチとの質問を中心とした会議
  • キャリアを考えるセッション&クロージング

学部での学び

新入生は16のクラスに分かれて学びを進めるとのことです。担当教員ごとにクラスに分かれ、先に説明したSAやCAが授業をサポートするとのことでした。少人数制でゼミも含めて学びを進めるというところが私の学ぶK.I.T.と通じるところを感じます。カリキュラムもMBAさながらでマーケティング、マネジメント、アカウンティング・ファイナンス、コミュニケーションの領域を学ぶとのことです。これだけ実践的な学びがあれば、企業に入社後の活躍も想像できます。

受講した感想

大学教育は大きく変わっているのだなぁと感じました。受動的な学びの場ではなく、アクティブ・ラーニングを取り入れた主体的な学習にシフトしています。ワークショップや会議の進め方を入学1日目から学ぶという立教大学経営学部の先進的な取り組みに本気で驚きを覚えました。

一方で、企業における人材育成・組織開発はそこまでついていっていないのが現状と思います。学術的な理論を背景とした学びの変化を企業における組織開発にも反映していかねばと刺激を頂いた2日間でした。

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*1:60名を超える応募があり、その中から選抜をされた18名とのことでした。

知性と成果の相関から考える組織開発の効果測定

なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践」をいまさらながら読みました。購入したのは昨年の4月だったと思うので、かれこれ1年の積読です。個人及びグループ内の能力開発や変革に関する内容で、今の自分には良いタイミングだったとポジティブに捉えています。

私が一番印象的だったことは「知性*1は何歳になっても高めることができる」ということです。「知性の段階ごとの主体客体関係」という図においては、時間に応じて3段階で知性を高めることができるとされていました。もちろん、時間が経てば誰でも知性を高めることができるということではなく、個人の成長が必要にはなりますが。

以下、私なりの解釈で3段階の知性をまとめたいと思います。

知性に関する3段階

1.環境順応型知性

第1の段階では、周囲に対して自分がどのように貢献をできるのか、ということを中心に考えます。所属する組織の価値基準に照らして判断するという段階です。自らの行動のためには、第三者のものさしが必要というレベルです。

2.自己主導型知性

第2段階になると、自らの価値基準を構築します。このレベルに到達すると、自らを律して主体的に行動できるようになります。自らの信念に基づき、リーダーシップを発揮します。

3.自己変容型知性

第3段階に到達すると、自らを正しいと信じつつも、自らの限界にも気づくようになります。真の正解を導くためには、自らの仮説を修正することを厭わないというレベルです。時には自らを客観視し、矛盾や反対を受け入れることができるようになります。


続いて面白かったのは、これらの知性の段階とビジネスにおける成果には相関があるという事実です。2つの異なる測定方法により結果が一致したとのことですので、信頼すべき結果と思います。有名企業のリーダーを対象にした調査においては、自己主導型の知性を身に着けている方は約5割にとどまり、自己変容型の知性となると1%しか存在しないということです。これは感慨深いですね…


もう一つ。知性のレベルは行動にも影響を及ぼし、知性は測定可能ということです。これは、組織開発の効果測定のヒントになりました。人間を測るには「行動を測る」ということに間違いはなさそうで、さらに「知性」の軸で分類ができそうです。組織全体の知性を測ることができれば、ケイパビリティを定量化できるかもしれないなぁと妄想しております。引き続き頑張ります!



P.S.
この本のメインのテーマは、タイトルの通り人と組織が変われない理由を明確にした上で「いかにして組織を変革するか」です。そのメカニズムは事例を含めて本文に詳細に掲載されています。私の興味関心は、知性の測定にフォーカスされていますが、多くの部分は個人やチームの変革に関する内容であることを補足させて頂きます。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:知能ではなく、「知性」です。念のため。

ディープラーニングから考える組織開発のあり方

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書) を読みました。

きっかけは「AlphaGo」のプロ棋士への勝利です。最近話題のディープラーニングの概要ぐらいは理解したいと思い、CTOのオススメの入門書ということで拝読しました。

ざっくりとした感想は、ディープラーニングの考え方は組織開発に通じる、ということです。私の頭が組織開発に凝り固まっているのが原因かもしれませんが、共感できる部分がたくさんありました。以下、本文を引用しながら考えをまとめたいと思います。

人工知能と組織開発の捉え方

人工知能研究者の多くは、知能を「構成論的」に解明するために研究をしている。構成論的というとちょっと難しいが、「つくることによって理解する」という意味である。それに対応する言葉は「分析的」である。
人工知能研究者が、知能を構成論的に理解したいと望んでいるのに対し、脳を研究する脳科学者は、分析的なアプローチで知能を解明しようとしている。

組織開発も「診断型組織開発」と「対話型組織開発」という手法があります。診断型組織開発は「実証主義」に基づき、対話型組織開発は「社会構成主義」に基づくものもあります。どちらが良い・悪いではありませんが、2つの同じような捉え方が人工知能にも組織開発にもあるのだ、ということが面白いですね。

また、人工知能においては、特徴量をどのように定めるかが大事であり、それを飛躍させたのがディープラーニングだと理解しました。特徴量を定める過程では得られた結果を概念化し、再帰的に抽象化することで「典型的な概念」を取り出すという説明がありました。概念化すれば、最後の意味付けは教師あり学習によりなされるとありました。

このプロセスは、組織開発にも応用できると思います。特徴量を定めるのはあくまでも組織の構成員ではありますが、適切な特徴量に導くのが人事の仕事ではないでしょうか。また、概念を正しく取り出し、その概念を組織として共通のものに浸透させることが、対話型組織開発そのものであると考えました。


対話型組織開発の効果測定

人間の社会がやっていることは、現実世界のものごとに特徴量や概念を捉える作業を、社会の中で生きる人達全員が、お互いにコミュニケーションをとることによって、共同して行っていると考えることもできる。
そして、そうして得た世界に関する本質的な抽象化をたくみに利用することによって、種としての人類が生き残る確率を上げている。

組織開発の効果測定ができないか、と考えていたのですが、ヒントを得ました。組織開発の効果は、共同の「概念化」の質によって測ることができるのではないか、という仮設です。概念化の質は、良い特徴量に依拠すると思いますが、ディープラーニングにおいて、良い特徴量をどのように判定しているのか、をもう少し調べたいと思いました。

また、頑健な概念はノイズを入れても揺るがない、という内容も非常に大きなヒントになりました。組織開発のリバースエンジニアリングのようですが、引き続きディープラーニングから学べることを考えてみたいと思います。コンピュータから人が学ぶなんて、なんだか面白いですね。


このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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フューチャーセッション「10年後、人事は従業員にどんな人事システム、働き方を提供できるのか」に参加しました

本日は有給を頂きました。子どもが2人揃って熱を出し、妻も仕事の都合がつかなかったので、お休みを頂きました。夕方からは、妻にバトンタッチし、「リクルートワークス&Future Sessions共同企画〜10年後、人事は従業員にどんな人事システム、働き方を提供できるのか」に参加させて頂きました。


不確実性の高い現代において、10年後に人事がどう変われるか、変えることができるのか、を考えるセッションでした。「ソーシャル」と「グローバル」、「安定した働き方」と「自由な働き方」を2軸とした4象限で働き方を分類します。そこから、象限ごとのニーズを整理し、変えるべき制度と成立条件を考えるセッションでした。詳細は、リクルートワークス研究所の『Works』にて取りまとめて頂けるとのことですので、楽しみに待ちたいと思います。


個人的に振り返って面白かったのは、人事は「制度よりも価値観、文化、フィロソフィー」が大事である、とみなさんが考えていたことです。また、我々のチームでは、思いや価値観が大事であり「制度をなくす制度」をつくるというテーマを掲げました。
しかし、人事は本当に腹をくくって実行できるでしょうか。また、社員も同様に、価値観だけをよりどころとして組織にコミットし続けることができるのでしょうか。(現に、自社ではやる自信はないが、他社にはやって欲しいという意見もありましたね。)


価値観(Shared Values)は前提として大事ですが、それだけでは足りません。前回の7Sに繋がりますが、Strategy, Structure, Systems, Style, Staff, Skillsも大事です。価値観を中心として、ハード、ソフトの3Sずつをどう考え、組織の目的に沿った効果を高めることが組織開発です。


今日は良い機会を頂きましたので、会社に戻って10年後を見据えた未来志向で今一度考えてみたいと思います。そして、考えるだけではなく、行動しなければ変化は起きませんので、理想論だけで終わらせないように肝に銘じます。

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このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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経営戦略と人事戦略のつながり 試行錯誤型組織開発について

今日のゼミで、なんとなく光明が見えそうになったので、忘れないうちにブログに残します。

先行研究をもとに組織開発の歴史をまとめたのが以下の図*1です。
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マネジメントの7要因をまとめた図ですが、かつては、「組織開発」(ソフト)と「組織変革」(ハード)は相互に作用するものの、別の概念で捉えられていました。ちなみに現在では、ソフトに加えてハードも組織開発の領域と広義に捉えることが一般的です。そして、ソフトの4つとハードの3つを足した7つがマッキンゼーが提唱した7Sなのですね。今日までそこにつながらなかった自分に反省です…

さて、ゼミの中で、ソフトの4Sは短期的に変えることが難しいため長期の視点が大事であり、ハードの3Sは意思決定により短期に変えることもできる。ただし、ハードを急激に変えたとしてもソフトがついてこないと撃沈するよね、という話になりました。これは「組織は戦略に従う」でチャンドラーが言っていると同じく、組織は戦略に従うのではなく戦略はすぐに変えられるが、組織はすぐに変えられないので、変化をするための準備が常に必要であるということと一緒です。


前置きが長くなりましたが、今日の議論の発端は、事業単位における組織開発手法が見当たらないのはなぜか、という切り口でした。詳細は前回のブログをご確認ください。
tapir320.hatenablog.jp


経営戦略のアウトプットとも言える経営計画は、環境変化が速い中で中長期な計画が立てづらくなり、3か年の中期経営計画が主流となっています。一方で、人事戦略における組織開発は長期的に取り組む課題であり、5年、10年といったロードマップが必要になります。経営は5年後なんてわからないという一方で、人事は10年後の人員構成や組織構造を考えることを求められるので、そこに矛盾が生じます。結果的に、経営戦略と人事戦略の時間軸の矛盾から、人事は独立して人事戦略を立てざるを得なくなったのではないか、というアドバイスを頂きました。

そこで待てよと思いました。どこかで見たことがあるぞ…

BCGが出しているなぜ戦略に戦略が必要なのかだ!と。


環境の予測可能性が低く、かつ、企業行動の環境への影響力が低い場合は、アダプティブ戦略が必要になります。また、アダプティブ戦略とは4つのステップ(変異→選定→展開→調整)からなる反復的な学習プロセスが特徴である、とのことです。

ピンときたのは、組織開発のソフト面(の一部)は長期的に醸成する必要がある一方で、その打ち手は試行錯誤型に実行するのが正しいのではないかということです。


人事の仕事をしながら自己矛盾を感じていることは、「人事は人事を中心に考えすぎる」ということです。自分の仕事を中心に考えるのはもちろん当たり前ですが、その前に経営戦略やもっと上位概念の市場環境を考えるべきであるというのが私の考えです。経営戦略としてアダプティブな戦略が求められる以上は、人事もそれに準じるべきではないかと思います。

そして、ソフトの4Sを更に分解すると、変えてはいけない3S*2(管理スタイル・人材・共通の価値観)と、常に変化の準備が必要な1S(技能)に分けることができます。この技能をいかに素早く変化し続けることができるかが、アダプティブ戦略が求められる環境では大事と考えました。それを実現するのが組織開発なのかなと。


人事は上段から構えるのではなく、現場に切り込んでいく必要があります。変えるべきSである技能の変化のきざしをいち早く察知するためにも、人事が主体的に行動を起こすべきです。ひょっとして、組織開発で一番大事なテーマは、メンバーと人事の関係ではないか、とも考えました。このテーマは別途調べたいと思います。


さてさて、探求が尽きることは無いです。これからは「試行錯誤型組織開発」というテーマでもう少し考えてみたいと思います。

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/NINKAN/kanko/pdf/bulletin06/02_01R.pdf 「組織開発(OD)とは何か? 南山大学 中村和彦先生 より作成

*2:この点は、組織によって考え方が違う可能性があります。

対話型組織開発の効果測定について

またまたブログの更新が滞っておりましたが、久しぶりに組織開発のお話です。本日は、自分自身の疑問をブログに綴りたいと思います。

組織開発の手法として、対話型組織開発がブームとなっています。AI(アプリシアティブ・インクワイアリー)やフューチャーセッションなどが代表的な手法です。対話型組織開発は、診断型組織開発と対比して語られることが多いですが、特徴は、組織開発の担当者自身が組織の診断をすることなく、実践者との対話を通じて組織開発を行うということです。
南山大学 中村和彦教授の「入門 組織開発」を拝読させて頂き、P180にまとめられていた体系図が大変参考になりました。そこで一つの疑問が生まれました。

組織(グループ)と戦略が交差する部分の組織開発の手法が空欄となっています。これは何故なのか…


そこで、私なりに回答を考えてみました。

まず、組織は戦略に従う(チャンドラー)が言っているとおり、組織は戦略に従うのではなく、戦略よりも組織は変化に時間がかかるので、外部環境を注視した変化の準備が必要である、ということが前提にあります。
事業戦略は、事業特性や組織の強み(ケイパビリティ)に応じて考えられるものではありますが、事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が編み出されていないことが空欄の理由と考えました。


事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が考えられれば面白いですよね。個人的には、B3Cフレームワークを活用した組織開発をイメージしています。そして、さらに効果測定が可能な対話型組織開発手法があれば理想です。投資対効果を測ることができれば、実務的な広がりがあると思います。

組織開発は深い分野ですので、探求が尽きることはありません。引き続き挑戦していきたいと思います。今回勉強をさせて頂いた書籍はこちらです。
入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)

中小企業診断士 第2次試験に合格しました

2回目の2次試験で、中小企業診断士試験に合格することができました。今後、中小企業診断士を目指す方のために私がどのような勉強法で合格をしたのかをまとめたいと思います。特に2次試験は、勉強すればするほど深みにハマると聞きますので、少しでも診断士を志す人の助けになれば幸いです。

はじめに

今年は2次試験のための勉強をほとんどしませんでしたが、無事合格することができました。ただし勉強をせずに合格したのではなく、社会人大学院での学びを活かしたところ結果につながりました。2014年の12月、不合格の結果に少なからずショックを受けていましたが、試験勉強だけでは実務の力が全くついていないことも感じていました。そのような中、当時の日経新聞の書評で取り上げられていた経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)がきっかけになり、金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)へ入学を決意しました。そして、K.I.T.での学びのおかげで試験に合格することができたと考えています。

金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)について

私の通うK.I.T.は、超少人数制(1つの授業に多くても20人程度)というところが特徴です。先生との距離も近く、一人ひとりに濃い教育を与えて頂けます。そして、先生はみなさん超一流です。私の中では、日本で一番の先生に教えて頂いていると思っています。
授業も講義形式の授業はほとんどありません。ディスカッションを中心とした自ら学びを作り上げていくスタイルです。よって、やるもやらないも本人次第。真剣に取り組めば取り組むほど、得られる結果も大きいと感じています。
K.I.T.のさらに特徴的なことは、ビジネススクールにも関わらずゼミがあることです。ゼミはさらに少人数制で、私の所属する三谷ゼミには5名の学生がいます。毎週土曜日のゼミは本当に贅沢な時間で、各自が進める研究テーマに沿って三谷さんとゼミ生でディスカッションを行います。

重要思考とB3Cフレームワーク

K.I.T.の主任教授も務める三谷さんから入学後の最初の科目である「戦略思考要論」の集中講義で叩き込まれるのが重要思考とB3Cです。
重要思考は「重み」と「差」で考える論理思考です。問題を考えるとき、その「差」に注目しがちですが、それだけではなくそもそもの「重み」から考える思考法です。
B3Cは、三谷さんが生み出した独自のフレームワークです。3Cに足りない考えを追加し、土俵(Battle Circle)、競合(Competitor)、自社(Company)に対して、「事業そのものの魅力」と「事業特性」を組みあせて6つのボックスから考えるフレームワークです。詳細は戦略思考要論」のページをご参照ください。

前置きが長くなりましたが、大学院での学びの基本である重要思考とB3Cフレームワークを使ってどのように2次試験に取り組んだのかを事例1の第1問を使って振り返ります。

事例1の第1問での振り返り

第1問
ゲートボールやグラウンドゴルフなど、A社を支えてきたスポーツ用品事業の市場には、どのような特性があると考えられるか。100字以内で述べよ。

問題全文は中小企業診断士試験問題よりご確認ください。

考え方

この問題は「市場の特性」を問われていますので、B3Cで言えば左の枠を答えることになります。また、与件文を読むと以下の様な特徴があります。

  • バトミントン
    • 「いち早く流行の兆しをとらえた創業者が…」
    • 「創業者のもくろみどおりその市場は広がった。」
    • 台湾製や中国製の廉価なシャトルコックを輸入されることになると、A社の売上は激減した。」
    • 「木製ラケットが金属フレームに代替されたこともあって、A社の売上は最盛期の70%減となり…」
  • ゲートボール
    • 「市場は徐々に伸長し、A社の製品が市場に出回るようになった」
    • 「しかし、その後、ゲートボールの人気に陰りがみられるようになったために、…」

上記の抜粋のうち、問われているのは「市場の特性」ですので、A社固有の事象は関係ありません。従って、与件文から「スポーツ用品事業の市場特性」についてのみ考えます。

解答の導き方

DMU*1にとって大事な事*2は、「みんながそのスポーツをやること」と捉えました。従って、みんながやらなくなると一気に誰もやらなくなるので、市場規模の拡大・縮小が激しいという特徴があります。製品ライフサイクルの変化のスピードが速いということです。
また、ファイブフォースで考えると海外からの廉価版による売上激減や木製から金属に移り変わったことによる代替品の脅威もありますので、さほど高い技術は必要とせず、参入障壁は低いことがわかります。これらの特徴をまとめて解答を導き出しました。

B3Cの補足説明

B3Cのフレームワークと言っておきながら、ファイブフォースが出てきているではないか、というツッコミもあるかと思います。なぜかと言いますと、B3Cの中の一つの要素をファイブフォースを使って考えるからです。
フレームワークって沢山(SWOT、ファイブフォース、アドバンテージリスクマトリックス、VRIO、PEST…)ありますが、そのつながりや粒度を理解していますでしょうか。少なくとも1年前の私は全く理解していませんでした。

フレームワークの概要を理解していても、何を対象に使うか(企業戦略、事業戦略、オペレーション戦略)やそのつながり(B3Cとプロダクトライフサイクル・ファイブフォースの関連)を理解することが大事です。1年前の私も、フレームワークの存在は知っていましたが、何をどう使って、どのようなつながりがあるかは全く理解していませんでした。*3従って、不合格になって当然だったと思います。

まとめ

2次試験の合格のポイントは、本質を学ぶことだと思います。全問記述式の解答ですので、与件文を正確に捉え、事実(定量・定性情報)をもとに論理的に考え、正解を導く必要があります。そのためには、正しく考える力を身につける必要があります。

最近感じていることは、物ごとを捉えるときに大事な事は、どれだけ正しく見ることができるかということです。判断をする前に、まずはそもそも正しく見ることができているかを疑うことから考えるようにしています。どうしても自分が正しいと思いがちですが、それは自分の価値観・判断基準だけで結論を出しています。

まずは現状を正しく捉える、そのためには、フレームワークを使って論理的に分析することも必要になります。また、公平な目で見る前提として自分自身が沢山のことを知っておく必要もあります。

K.I.T.で本質的な考え方を学びたいと思われた方は無料の公開講座もあります。是非一度体験してみてください。
www.kanazawa-it.ac.jp

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!
hatenacorp.jp
hatenacorp.jp

診断士試験の合格で、基礎知識の確認ができたと思っていますので、これからも日々研鑽に努めます!

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

*1:「Decision Making Unit」(意思決定単位)の略

*2:重要思考

*3:今でもまだまだB3Cを理解したとは言えませんので、引き続きK.I.T.で学びたいと思います。