組織を極める

組織や人に関することが好きなので情報発信します

ディープラーニングから考える組織開発のあり方

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書) を読みました。

きっかけは「AlphaGo」のプロ棋士への勝利です。最近話題のディープラーニングの概要ぐらいは理解したいと思い、CTOのオススメの入門書ということで拝読しました。

ざっくりとした感想は、ディープラーニングの考え方は組織開発に通じる、ということです。私の頭が組織開発に凝り固まっているのが原因かもしれませんが、共感できる部分がたくさんありました。以下、本文を引用しながら考えをまとめたいと思います。

人工知能と組織開発の捉え方

人工知能研究者の多くは、知能を「構成論的」に解明するために研究をしている。構成論的というとちょっと難しいが、「つくることによって理解する」という意味である。それに対応する言葉は「分析的」である。
人工知能研究者が、知能を構成論的に理解したいと望んでいるのに対し、脳を研究する脳科学者は、分析的なアプローチで知能を解明しようとしている。

組織開発も「診断型組織開発」と「対話型組織開発」という手法があります。診断型組織開発は「実証主義」に基づき、対話型組織開発は「社会構成主義」に基づくものもあります。どちらが良い・悪いではありませんが、2つの同じような捉え方が人工知能にも組織開発にもあるのだ、ということが面白いですね。

また、人工知能においては、特徴量をどのように定めるかが大事であり、それを飛躍させたのがディープラーニングだと理解しました。特徴量を定める過程では得られた結果を概念化し、再帰的に抽象化することで「典型的な概念」を取り出すという説明がありました。概念化すれば、最後の意味付けは教師あり学習によりなされるとありました。

このプロセスは、組織開発にも応用できると思います。特徴量を定めるのはあくまでも組織の構成員ではありますが、適切な特徴量に導くのが人事の仕事ではないでしょうか。また、概念を正しく取り出し、その概念を組織として共通のものに浸透させることが、対話型組織開発そのものであると考えました。


対話型組織開発の効果測定

人間の社会がやっていることは、現実世界のものごとに特徴量や概念を捉える作業を、社会の中で生きる人達全員が、お互いにコミュニケーションをとることによって、共同して行っていると考えることもできる。
そして、そうして得た世界に関する本質的な抽象化をたくみに利用することによって、種としての人類が生き残る確率を上げている。

組織開発の効果測定ができないか、と考えていたのですが、ヒントを得ました。組織開発の効果は、共同の「概念化」の質によって測ることができるのではないか、という仮設です。概念化の質は、良い特徴量に依拠すると思いますが、ディープラーニングにおいて、良い特徴量をどのように判定しているのか、をもう少し調べたいと思いました。

また、頑健な概念はノイズを入れても揺るがない、という内容も非常に大きなヒントになりました。組織開発のリバースエンジニアリングのようですが、引き続きディープラーニングから学べることを考えてみたいと思います。コンピュータから人が学ぶなんて、なんだか面白いですね。


このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
見識の違い等、お気づきの点がありましたら、フィードバック頂ければ幸いです。

フューチャーセッション「10年後、人事は従業員にどんな人事システム、働き方を提供できるのか」に参加しました

本日は有給を頂きました。子どもが2人揃って熱を出し、妻も仕事の都合がつかなかったので、お休みを頂きました。夕方からは、妻にバトンタッチし、「リクルートワークス&Future Sessions共同企画〜10年後、人事は従業員にどんな人事システム、働き方を提供できるのか」に参加させて頂きました。


不確実性の高い現代において、10年後に人事がどう変われるか、変えることができるのか、を考えるセッションでした。「ソーシャル」と「グローバル」、「安定した働き方」と「自由な働き方」を2軸とした4象限で働き方を分類します。そこから、象限ごとのニーズを整理し、変えるべき制度と成立条件を考えるセッションでした。詳細は、リクルートワークス研究所の『Works』にて取りまとめて頂けるとのことですので、楽しみに待ちたいと思います。


個人的に振り返って面白かったのは、人事は「制度よりも価値観、文化、フィロソフィー」が大事である、とみなさんが考えていたことです。また、我々のチームでは、思いや価値観が大事であり「制度をなくす制度」をつくるというテーマを掲げました。
しかし、人事は本当に腹をくくって実行できるでしょうか。また、社員も同様に、価値観だけをよりどころとして組織にコミットし続けることができるのでしょうか。(現に、自社ではやる自信はないが、他社にはやって欲しいという意見もありましたね。)


価値観(Shared Values)は前提として大事ですが、それだけでは足りません。前回の7Sに繋がりますが、Strategy, Structure, Systems, Style, Staff, Skillsも大事です。価値観を中心として、ハード、ソフトの3Sずつをどう考え、組織の目的に沿った効果を高めることが組織開発です。


今日は良い機会を頂きましたので、会社に戻って10年後を見据えた未来志向で今一度考えてみたいと思います。そして、考えるだけではなく、行動しなければ変化は起きませんので、理想論だけで終わらせないように肝に銘じます。

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経営戦略と人事戦略のつながり 試行錯誤型組織開発について

今日のゼミで、なんとなく光明が見えそうになったので、忘れないうちにブログに残します。

先行研究をもとに組織開発の歴史をまとめたのが以下の図*1です。
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マネジメントの7要因をまとめた図ですが、かつては、「組織開発」(ソフト)と「組織変革」(ハード)は相互に作用するものの、別の概念で捉えられていました。ちなみに現在では、ソフトに加えてハードも組織開発の領域と広義に捉えることが一般的です。そして、ソフトの4つとハードの3つを足した7つがマッキンゼーが提唱した7Sなのですね。今日までそこにつながらなかった自分に反省です…

さて、ゼミの中で、ソフトの4Sは短期的に変えることが難しいため長期の視点が大事であり、ハードの3Sは意思決定により短期に変えることもできる。ただし、ハードを急激に変えたとしてもソフトがついてこないと撃沈するよね、という話になりました。これは「組織は戦略に従う」でチャンドラーが言っていると同じく、組織は戦略に従うのではなく戦略はすぐに変えられるが、組織はすぐに変えられないので、変化をするための準備が常に必要であるということと一緒です。


前置きが長くなりましたが、今日の議論の発端は、事業単位における組織開発手法が見当たらないのはなぜか、という切り口でした。詳細は前回のブログをご確認ください。
tapir320.hatenablog.jp


経営戦略のアウトプットとも言える経営計画は、環境変化が速い中で中長期な計画が立てづらくなり、3か年の中期経営計画が主流となっています。一方で、人事戦略における組織開発は長期的に取り組む課題であり、5年、10年といったロードマップが必要になります。経営は5年後なんてわからないという一方で、人事は10年後の人員構成や組織構造を考えることを求められるので、そこに矛盾が生じます。結果的に、経営戦略と人事戦略の時間軸の矛盾から、人事は独立して人事戦略を立てざるを得なくなったのではないか、というアドバイスを頂きました。

そこで待てよと思いました。どこかで見たことがあるぞ…

BCGが出しているなぜ戦略に戦略が必要なのかだ!と。


環境の予測可能性が低く、かつ、企業行動の環境への影響力が低い場合は、アダプティブ戦略が必要になります。また、アダプティブ戦略とは4つのステップ(変異→選定→展開→調整)からなる反復的な学習プロセスが特徴である、とのことです。

ピンときたのは、組織開発のソフト面(の一部)は長期的に醸成する必要がある一方で、その打ち手は試行錯誤型に実行するのが正しいのではないかということです。


人事の仕事をしながら自己矛盾を感じていることは、「人事は人事を中心に考えすぎる」ということです。自分の仕事を中心に考えるのはもちろん当たり前ですが、その前に経営戦略やもっと上位概念の市場環境を考えるべきであるというのが私の考えです。経営戦略としてアダプティブな戦略が求められる以上は、人事もそれに準じるべきではないかと思います。

そして、ソフトの4Sを更に分解すると、変えてはいけない3S*2(管理スタイル・人材・共通の価値観)と、常に変化の準備が必要な1S(技能)に分けることができます。この技能をいかに素早く変化し続けることができるかが、アダプティブ戦略が求められる環境では大事と考えました。それを実現するのが組織開発なのかなと。


人事は上段から構えるのではなく、現場に切り込んでいく必要があります。変えるべきSである技能の変化のきざしをいち早く察知するためにも、人事が主体的に行動を起こすべきです。ひょっとして、組織開発で一番大事なテーマは、メンバーと人事の関係ではないか、とも考えました。このテーマは別途調べたいと思います。


さてさて、探求が尽きることは無いです。これからは「試行錯誤型組織開発」というテーマでもう少し考えてみたいと思います。

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*1:http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/NINKAN/kanko/pdf/bulletin06/02_01R.pdf 「組織開発(OD)とは何か? 南山大学 中村和彦先生 より作成

*2:この点は、組織によって考え方が違う可能性があります。

対話型組織開発の効果測定について

またまたブログの更新が滞っておりましたが、久しぶりに組織開発のお話です。本日は、自分自身の疑問をブログに綴りたいと思います。

組織開発の手法として、対話型組織開発がブームとなっています。AI(アプリシアティブ・インクワイアリー)やフューチャーセッションなどが代表的な手法です。対話型組織開発は、診断型組織開発と対比して語られることが多いですが、特徴は、組織開発の担当者自身が組織の診断をすることなく、実践者との対話を通じて組織開発を行うということです。
南山大学 中村和彦教授の「入門 組織開発」を拝読させて頂き、P180にまとめられていた体系図が大変参考になりました。そこで一つの疑問が生まれました。

組織(グループ)と戦略が交差する部分の組織開発の手法が空欄となっています。これは何故なのか…


そこで、私なりに回答を考えてみました。

まず、組織は戦略に従う(チャンドラー)が言っているとおり、組織は戦略に従うのではなく、戦略よりも組織は変化に時間がかかるので、外部環境を注視した変化の準備が必要である、ということが前提にあります。
事業戦略は、事業特性や組織の強み(ケイパビリティ)に応じて考えられるものではありますが、事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が編み出されていないことが空欄の理由と考えました。


事業戦略と組織戦略を融合する組織開発手法が考えられれば面白いですよね。個人的には、B3Cフレームワークを活用した組織開発をイメージしています。そして、さらに効果測定が可能な対話型組織開発手法があれば理想です。投資対効果を測ることができれば、実務的な広がりがあると思います。

組織開発は深い分野ですので、探求が尽きることはありません。引き続き挑戦していきたいと思います。今回勉強をさせて頂いた書籍はこちらです。
入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)

中小企業診断士 第2次試験に合格しました

2回目の2次試験で、中小企業診断士試験に合格することができました。今後、中小企業診断士を目指す方のために私がどのような勉強法で合格をしたのかをまとめたいと思います。特に2次試験は、勉強すればするほど深みにハマると聞きますので、少しでも診断士を志す人の助けになれば幸いです。

はじめに

今年は2次試験のための勉強をほとんどしませんでしたが、無事合格することができました。ただし勉強をせずに合格したのではなく、社会人大学院での学びを活かしたところ結果につながりました。2014年の12月、不合格の結果に少なからずショックを受けていましたが、試験勉強だけでは実務の力が全くついていないことも感じていました。そのような中、当時の日経新聞の書評で取り上げられていた経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)がきっかけになり、金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)へ入学を決意しました。そして、K.I.T.での学びのおかげで試験に合格することができたと考えています。

金沢工業大学虎ノ門大学院(通称K.I.T.)について

私の通うK.I.T.は、超少人数制(1つの授業に多くても20人程度)というところが特徴です。先生との距離も近く、一人ひとりに濃い教育を与えて頂けます。そして、先生はみなさん超一流です。私の中では、日本で一番の先生に教えて頂いていると思っています。
授業も講義形式の授業はほとんどありません。ディスカッションを中心とした自ら学びを作り上げていくスタイルです。よって、やるもやらないも本人次第。真剣に取り組めば取り組むほど、得られる結果も大きいと感じています。
K.I.T.のさらに特徴的なことは、ビジネススクールにも関わらずゼミがあることです。ゼミはさらに少人数制で、私の所属する三谷ゼミには5名の学生がいます。毎週土曜日のゼミは本当に贅沢な時間で、各自が進める研究テーマに沿って三谷さんとゼミ生でディスカッションを行います。

重要思考とB3Cフレームワーク

K.I.T.の主任教授も務める三谷さんから入学後の最初の科目である「戦略思考要論」の集中講義で叩き込まれるのが重要思考とB3Cです。
重要思考は「重み」と「差」で考える論理思考です。問題を考えるとき、その「差」に注目しがちですが、それだけではなくそもそもの「重み」から考える思考法です。
B3Cは、三谷さんが生み出した独自のフレームワークです。3Cに足りない考えを追加し、土俵(Battle Circle)、競合(Competitor)、自社(Company)に対して、「事業そのものの魅力」と「事業特性」を組みあせて6つのボックスから考えるフレームワークです。詳細は戦略思考要論」のページをご参照ください。

前置きが長くなりましたが、大学院での学びの基本である重要思考とB3Cフレームワークを使ってどのように2次試験に取り組んだのかを事例1の第1問を使って振り返ります。

事例1の第1問での振り返り

第1問
ゲートボールやグラウンドゴルフなど、A社を支えてきたスポーツ用品事業の市場には、どのような特性があると考えられるか。100字以内で述べよ。

問題全文は中小企業診断士試験問題よりご確認ください。

考え方

この問題は「市場の特性」を問われていますので、B3Cで言えば左の枠を答えることになります。また、与件文を読むと以下の様な特徴があります。

  • バトミントン
    • 「いち早く流行の兆しをとらえた創業者が…」
    • 「創業者のもくろみどおりその市場は広がった。」
    • 台湾製や中国製の廉価なシャトルコックを輸入されることになると、A社の売上は激減した。」
    • 「木製ラケットが金属フレームに代替されたこともあって、A社の売上は最盛期の70%減となり…」
  • ゲートボール
    • 「市場は徐々に伸長し、A社の製品が市場に出回るようになった」
    • 「しかし、その後、ゲートボールの人気に陰りがみられるようになったために、…」

上記の抜粋のうち、問われているのは「市場の特性」ですので、A社固有の事象は関係ありません。従って、与件文から「スポーツ用品事業の市場特性」についてのみ考えます。

解答の導き方

DMU*1にとって大事な事*2は、「みんながそのスポーツをやること」と捉えました。従って、みんながやらなくなると一気に誰もやらなくなるので、市場規模の拡大・縮小が激しいという特徴があります。製品ライフサイクルの変化のスピードが速いということです。
また、ファイブフォースで考えると海外からの廉価版による売上激減や木製から金属に移り変わったことによる代替品の脅威もありますので、さほど高い技術は必要とせず、参入障壁は低いことがわかります。これらの特徴をまとめて解答を導き出しました。

B3Cの補足説明

B3Cのフレームワークと言っておきながら、ファイブフォースが出てきているではないか、というツッコミもあるかと思います。なぜかと言いますと、B3Cの中の一つの要素をファイブフォースを使って考えるからです。
フレームワークって沢山(SWOT、ファイブフォース、アドバンテージリスクマトリックス、VRIO、PEST…)ありますが、そのつながりや粒度を理解していますでしょうか。少なくとも1年前の私は全く理解していませんでした。

フレームワークの概要を理解していても、何を対象に使うか(企業戦略、事業戦略、オペレーション戦略)やそのつながり(B3Cとプロダクトライフサイクル・ファイブフォースの関連)を理解することが大事です。1年前の私も、フレームワークの存在は知っていましたが、何をどう使って、どのようなつながりがあるかは全く理解していませんでした。*3従って、不合格になって当然だったと思います。

まとめ

2次試験の合格のポイントは、本質を学ぶことだと思います。全問記述式の解答ですので、与件文を正確に捉え、事実(定量・定性情報)をもとに論理的に考え、正解を導く必要があります。そのためには、正しく考える力を身につける必要があります。

最近感じていることは、物ごとを捉えるときに大事な事は、どれだけ正しく見ることができるかということです。判断をする前に、まずはそもそも正しく見ることができているかを疑うことから考えるようにしています。どうしても自分が正しいと思いがちですが、それは自分の価値観・判断基準だけで結論を出しています。

まずは現状を正しく捉える、そのためには、フレームワークを使って論理的に分析することも必要になります。また、公平な目で見る前提として自分自身が沢山のことを知っておく必要もあります。

K.I.T.で本質的な考え方を学びたいと思われた方は無料の公開講座もあります。是非一度体験してみてください。
www.kanazawa-it.ac.jp

さらに、はてなでは一緒に働く仲間を募集しています!
hatenacorp.jp
hatenacorp.jp

診断士試験の合格で、基礎知識の確認ができたと思っていますので、これからも日々研鑽に努めます!

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*1:「Decision Making Unit」(意思決定単位)の略

*2:重要思考

*3:今でもまだまだB3Cを理解したとは言えませんので、引き続きK.I.T.で学びたいと思います。

はてなの組織開発について

こんにちは、人事・総務部id:tapir320です。
この記事ははてなデベロッパーアドベントカレンダー2015の9日目です。昨日は id:cockscomb による Swiftオープンソース化の衝撃 でした。
今回、開発者ではない私が、なぜデベロッパアドベントカレンダーに登場する機会を頂いたかと言いますとid:Songmu

「俺は会社をデベロップしているんだ!」というコーポレートの方も大歓迎です。

という一言のお陰です。

せっかくの機会ですので、会社のデベロップという観点から、はてなの組織開発についてお話をさせて頂きます。

組織開発とは

組織開発という言葉は、人事に携わっていない方にとっては馴染みがないと思います。様々な定義がありますが、私は組織を活性化するためのあらゆる打ち手とみなしています。

人事・総務の業務領域のうち組織開発に関連するものは、「採用」、「教育・研修」、「人事制度」、「社内行事」、「福利厚生」等があります。これらは一体となり、つながりを持つことが大事だと考えています。一つの領域だけに注力するのではなく、有機的につながることで組織の力を2倍・3倍に高めることができると信じています。

はてなの組織開発

「採用」、「教育・研修」、「人事制度」、「社内行事」、「福利厚生」の5項目において、はてなの特徴的な取り組みをご紹介します。

「採用」 〜社員紹介採用の強化〜

最近は既存社員の紹介によりご入社頂くケースが増えていますが、組織開発の視点でも大事なことだと考えています。自分自身に置き換えるとわかりやすいのですが、自分が満足していない会社に知人を紹介したいとは思わないはずです。従って、紹介による採用が多いということは、既存社員が会社に満足している証と言えます。

一方で、紹介経由で入社した方も安心感があります。気の置けない人が勧める環境であれば、転職という人生の大切な節目において、リスクが小さい保証になるからです。紹介経由の採用が好循環で回り始めると組織力の強化につながることがわかると思います。

もちろん、紹介であればどなたでもご入社頂けるということではなく、残念ながらお断りするケースもあります。ご紹介を頂いた方、また、エントリーを頂いた方には申し訳ないのですが、選考は厳正に進めている旨を補足させて頂きます。

「教育・研修」 〜社内勉強会の開催〜

はてなでは様々な社内勉強会が開催されています。技術やデザインの勉強会は毎週開催されていますし、人事・総務部でも月に1回テーマを設定して勉強会を開催しています。最近は毎週月曜日の定時後に好きな本を読む「モクモク会」という取り組みも生まれました。そして何よりも素晴らしいのは、これらの勉強会が自発的に開催されているということです。(人事・総務部の勉強会は僕がやろうと言い出したのですが…)

他人に強要されて学ぶのではなく、自ら主体的に行動することが真の学習に繋がると思います。フォーマルな組織上の取り組みではなく、インフォーマルなコミュニティによる学びの場が組織力を高めるのです。実践的なコミュニティを生み出す土壌があることがはてなの価値であり、勉強後には寿司を食べる文化も良いと思っています。

「人事制度」 〜評価ではフィードバックを大切に〜

はてなの人事制度はきっちりと設計されています。「成果」「行動」「専門」という3つの視点で定量的・定性的に評価制度を運用します。ただ、忘れてはいけないのは、評価制度は査定のためだけにあるのではなく、個人や組織の成長のためのツールであるということです。現状と目指すべき理想のギャップを埋めるツールが評価制度ですので、目標設定とフィードバックが大事なのです。

はてなの組織体系は、サービスごとのラインと職種ごとのラインがマトリックス型のように構成されています。そのため、サービスの上長と職種の上長の2系統からフィードバックを得ることができます。このような仕組みは手厚さという面では素晴らしいのですが、一方で時間がかかるというデメリットもあります。効果と労力はトレードオフとも言えますが、さらによい制度にするためには見直しが必要かもしれません。

「社内行事」 〜半期に一度の全社納会〜

普段は京都・東京(愛知・宮城のリモート勤務の方もいます)に分かれて働いていますが、半年に一度は全社員が京都に集合し、納会を開催します。納会では半期の業績の振り返りや新しい期に向けた方針発表がなされます。また、懇親会では全社員の前で「新人賞」「敢闘賞」「社長賞」という3賞の表彰もあります。

テレビ会議、Slack、はてなグループというツールを駆使して業務効率化に取り組んでいますが、リアルに顔を合わせるコミュニケーションも大事です。全社員が一堂に会し、同じ空間で空気を共有することに価値があると思います。半年の頑張りを讃え、また半年頑張ろう!という組織のスイッチを入れるのが納会の役割です。

「福利厚生」 〜まかないランチ

最後はキングオブランチとも言われるまかないランチです。ご存じの方も多いとは思いますが、はてなではお昼になるとまかないが振る舞われ、社員が同じ釜の飯を頂きます。まかないランチの効果は今回のエントリーでは書ききれないほどありますが、一番はコミュニケーションの円滑化につながっていることです。

まかないランチはリフレッシュスペースのランダムな席に座って食べます。職種もバラバラに混ざって食べるため、自然といろいろな人と会話をすることになります。そして、コミュニケーションが円滑になることで社員の関係の質も良くなります。関係の質が良くなれば思考の質が良くなり、思考の質が良くなると行動の質が良くなります。行動の質が良くなると結果の質が良くなるのです。これはダニエル・キム教授がいう組織の好循環モデルを実現している好例です。

まとめとこれからの思い

今回ご紹介した制度から生まれるはてならしさは、はてながコツコツと築き上げてきた文化の賜物です。仮に他社が同じような制度をハードとして仕組み化することはできても、ソフトである組織文化を模倣することは一朝一夕ではできません。

これはサービス開発と一緒だと捉えています。へんな会社だけど真面目な会社でもあるはてなが作ったサービスを、個性豊かなユーザー様に利用し続けて頂くことで成立しているはてなコミュニティと同じなのです。組織もサービスも、仕組みと文化が融合して初めて価値があるのです。

私が入社して3年が経過しましたが、これまでは主に仕組みを整備することを行ってきました。その過程で気をつけていたことは、いかにしてはてなの文化を活かしながら整えていくかということです。

しかし、これからは挑戦をしなければいけません。はてなが日本一、世界一のサービスを生み出し続ける会社になるためには、仕組みも文化も変わらなければいけないこともあると考えています。

具体的には意思決定のスピードを速めることです。以下のエントリーでも書いたとおり、変化の速い環境においては、Do→Learn→Prototypeのプロセスをぐるぐると高速に回すことが求められています。
tapir320.hatenablog.jp
試行錯誤型のプロセスを実践し、実験する能力を高め、失敗への対応力をつけていく必要があります。

そして、組織全体のスピードを上げるためには、人事・総務も変わらなければいけないとも考えています。人事・総務もエンジニアやデザイナーに負けないぐらいの実力をつけなければいけません。自分の専門領域を追求し、世の中に変化を起こし、はてなに関わる全ての人が笑顔であり続けるために、はてなのサービスやカルチャーを愛し、インターネットを良くすることに貢献する、そんな人事・総務が理想の姿です。

外部環境が大きく変化をする中、「変わらなければならないこと」と「変わってはいけないこと」をしっかりと見極め、へんな会社であり続けたいと思います。

はてなでは文化に共感して頂ける仲間を絶賛募集中です!

hatenacorp.jp
hatenacorp.jp

明日は、id:taraoです。お楽しみに!

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組織がイノベーションを起こすために人事は何ができるのか

早いもので後期の授業がスタートしました。前期はなんとか単位を落とすこと無く終了しましたが、早くも授業の予習復習に追われています。ブログを書いている暇があったら授業の準備をしろという声が聞こえてきそうではありますが、半期の振り返りの意味も込めてこれまでに学んできたことをまとめたいと思います。

ゼミでの研究テーマは今回のエントリーのタイトル通り「組織がイノベーションを起こすために人事は何ができるのか」を中心に進めています。まだまだインプットの段階ではありますが、これまでに調べ、考えたこととして以下の2点があります。

  • イノベーションを起こすには「つながり」と「行動」が重要である。
  • 真の改革に向けては明確な「ビジョン」の「浸透」が必要である。

イノベーションを起こすには「つながり」と「行動」が重要である

「つながり」と「行動」というミーシーではない2軸での表現ではありますが、自分の中では一番熱いテーマです。つながりとは、まさに人と人とのつながりを指していますが、つながりにも2つの要素があります。それは「弱いつながり」と「強いつながり」です。

「弱いつながり」による多様な接点(組織外やプライベートを含みます)を元にイノベーションの種を生み出し、組織内の「強いつながり」により実現に向けてドライブする。また、成果を導くためには、「行動」を起こす必要があるという話に続きます。

「行動」がなぜ大切かですが、答えは自分の中ではなくそれを利用するDMU*1にあるという考えから導かれています。環境の変化が早い現代においては、計画主義型のPDCAサイクルではなく、行動主義型のDo→Learn→Prototypeへのシフトが求められており、特にインターネット業界においてはABテストという手法で実用化されています。DMUの行動を調べるには実際に利用してもらうことが一番であり、よりユーザーが満足した成果を正とする考え方です。

よって、実行し、学習し、プロトタイプを素早く作り、グルグルと速いサイクルで回すことがより良いサービスや製品開発につながり、ひいてはイノベーションにつながると考えています。

真の改革に向けては明確な「ビジョン」の「浸透」が必要である

組織は、目的がない組織と目的がある組織の2つに分けることができます。目的がない組織の例としては家族です。家族は生まれながらに形成されます。一方で目的のある組織の例は企業です。企業はある特定の目的を持ったメンバーが集まり形成されます。その目的を明確にするために大切なものが「ビジョン」です。

「ビジョン」の無い組織は、何のために存在するのか、何のために集まっているのかが曖昧になります。短期的にはそれでも良いかもしれませんが、中長期的な組織の成長のためには「ビジョン」は欠かせません。ビジョンを通じて組織の一体感や本質的な価値を実感することができるからです。

また、その「ビジョン」は掲げているだけでは意味がありません。メンバー全員に浸透し、共通の理念として腹に落ちることで真の価値を発揮します。「ビジョン」に共感し、また、自身のキャリア・アンカーと組織のベクトルが一致することで個人と組織の成長がともに最大化します。結果的にイノベーションが起きると信じています。

人事は何ができるのか

上記を実現するために「採用」・「研修」・「人事制度」・「組織開発」という打ち手に落とし込みます。組織の理想の姿はどのようなものか、現状はどうか、理想と現状を埋めるための打ち手は何が最適か、といったことを考え、実行するのが役割です。

的確な打ち手を実行するためには、それぞれのツールを熟知する必要があります。「勝てる採用の戦い方」、「有効な研修や教育とはなにか」、「評価・報酬・等級の考え方」、「組織マネジメントの本質」を継続的に学び続けることが求められます。常に外部環境は変化し続けるからです。

自らの知識を陳腐化させることで自身の成長につなげ、知的資本というツールを使って組織の理想に向けて情熱を捧げることが人事の仕事の本質と捉えています。

まとめ

半年前には見えていないこともだいぶ見えるようになったとは思う一方、まだまだ見えていないことが沢山あるとも思っています。当初は1年で卒業しようと思っていましたが、2年間じっくりと勉強し、自分を成長させ、組織の成長に向けて貢献できればと考えています。

はてなでは一緒にイノベーションを起こす人材を募集しています!hatenacorp.jp

参考図書

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

企業変革力

企業変革力

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

組織開発ハンドブック―組織を健全かつ強固にする4つの視点

組織開発ハンドブック―組織を健全かつ強固にする4つの視点

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

参考資料

このブログは、実務を通じて個人的に学んだ現時点の見解であり、正確性および完全性について保証せず、また責任を負いません。記載内容につきましては、専門家等の意見をもとに自己責任でのご判断をお願いします。
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*1:Decision Making Unit